アオサギを議論するページ

サギ類の大きさ比べ

アオサギに近縁のサギたちを大きさ順に並べてみました。こうして見ると、アオサギはちょうど真ん中あたりになりますね。アオサギを普段一番見慣れているせいか、このArdea属14種の中では、アオサギが、姿形、大きさの面でもっとも基本形に近いように思います。他はアオサギを原形として大きくなったり小さくなったり、黒くなったり白くなったりといった感じです。いや、実際はこの14種のどれでもないプロトタイプのサギが先祖にいて、そこから様々に分岐したのでしょうけど、そのプロトタイプにもっとも近いのはやっぱりアオサギのような気がします。

この図を見て、コサギがいないと思う人がいるかもしれません。あるいはカラシラサギが抜けてるとか。それらの種はArdea属ではなく近縁のEgretta属にいるのですね。それならチュウサギやダイサギもEgretta属だろうと言われるかもしれませんが、チュウサギやダイサギは最近になってEgretta属からArdea属に越してきたのです。しかも、ダイサギに至っては、それまで亜種扱いだったチュウダイサギとオオダイサギが別々の種となってめでたく参入しました。ついでになぜかアマサギまでBubulcus属から仲間入りしています。アマサギが入るのだったら、コサギやカラシラサギのほうが先に入りそうなものですが、その辺は外見だけでは分からない分類学上の深い理由があるのでしょう。

ところで、上に描いたサギの絵は、当サイトの『サギたちのプロフィール』にあるものと一緒です。ただ、同ページではすべてのサギを同じ縮尺で載せているので、今回はそれぞれの大きさの違いが分かるように大きさ順に並んでもらったわけです。ところが、この背比べにはひとつ問題があるのですね。鳥の大きさというのは、人間の背丈を測るようには測れません。地面から頭のてっぺんまでの高さを測ろうにも、とくにサギなどの場合は、首の伸ばし加減や胴体の傾け具合で様々に変わりますから。なので、一般には首を伸ばした状態で嘴の先端から尾羽の先端までを測り、それを全長として表記しています。じつは、上の絵は、全長の違いを絵にしたもので、実際の大きさの違いを正確には反映していません。ただ、首のやや短いアマサギとチュウサギを除けば、あとのサギたちはほとんど似たようなフォルムですから、全長の違いを体高の違いとみなしても、目安ていどに見る分には差し支えないと思います。

さてさて、今日はクリスマスイブ。そんな日にわざわざ当サイトを訪れ、しかもこんな記事を最後まで読んでいただいた物好きな方へ、今回はささやかなクリスマスプレゼントを用意しました。サギのイラストの入った来年のカレンダーです。プレゼントといっても、ご自分で印刷して切り取らなくてはなりませんけど。それでも構わない、サギさえいれば、というサギ好きな方は以下のPDFファイルをダウンロードしてみてください。A4の少し厚めの紙に印刷し、ひと月分ずつ切り取って卓上カレンダーにするのがいいと思います。(追記:作られた方からさっそくお写真が届きました。一枚一枚切り離さず、こんなふうに三角形にして置くのもいいですね。)

     カレンダー(日本語版)   カレンダー(英語版)

本当はArdea属の全14種に登場してもらいたかったのですが、なにぶん一年が12ヶ月しかないもので、全てを載せることはできません。そこで、最近になってArdea属に加わったアマサギとチュウサギの2種には泣く泣くご遠慮いただきました。彼らにはまた別の機会での活躍を期待したいと思います。

ここ札幌はホワイトクリスマスの夜を迎えようとしています。ちらちらと雪が舞っています。いよいよ年の瀬ですね。今年も一年ありがとうございました。良いお年をお迎えください。


サギ三昧のサイト紹介

HeronConservation。サギの保全という意味ですね。Conservationというのは日本語に訳すと保護とか管理とか、どうにも役所的な雰囲気が漂ってあまり好きではないのですが、本来はもっとずっと幅の広い意味をもつ言葉だと思います。なんと言えばいいのか、ともかくもっと感じのいい言葉のはずなんですね。

ということで、今回はHeronConservationというホームページのご紹介です。左の絵はこのサイトのロゴで、このロゴからイメージできるようにとてもあっさりしたつくりのサイトです。ただ、そこにある情報量は膨大です。今年の夏にオープンしたばかりというのに、できた時からサギ類のあらゆる情報が満載されていました。それもそのはずで、このページを運営しているのはHeron Specialist Groupという全世界のサギ類の専門家集団なんですね。じつはこのグループ自体はもうずいぶん昔から存在しています。ただ、メンバーといってもそれぞれの国に一人とか二人とかばらばらにいるだけなので、組織として活動し続けるということはなかなか難しく、長い休眠期間の合間にたまに思い出したように活動してきたという印象です。今回のホームページもそんな突発的な活動のひとつかもしれません。ただ、先に書いたように内容が充実しすぎていますのでこれは侮れないと思います。サイトの中にオンラインジャーナルまでありますし。もちろん全部タダで読めます。びっくりするのは世界のサギ類が紹介されているページで、ここには”The Herons”という433ページもある本がほとんど丸ごと転載されているんですね。”The Herons”、つまり「サギ」。当サイトでも何度か引用してきた現在のサギ類研究のバイブル的な存在の本です。アオサギの紹介だけでもこんな分量になります。これがサギ類62種全てについてあるわけですから、いや、 大変な大盤振る舞いです。

このサイトには他にも興味深い資料がたくさんあります。気が向いたらまた少しずつ紹介してみますね。


大規模コロニー列伝

先日の投稿で、北海道浦幌市と秋田県男鹿市、それに三重県尾鷲市が市の鳥をアオサギに指定していることを紹介しました。浦幌のコロニーについては稲穂コロニーのページに詳細を書いていますが、他のふたつのコロニーについても概要を書いておきたいと思います。

コロニーの位置(大きな地図で見る

まずは男鹿のコロニー。ここのアオサギは男鹿半島の山の中腹に営巣しています。私もずっと前に訪ねたことがありますが、ほんとうに山の中です。コロニーのある場所の標高は約400m。餌場になりそうな水辺といえば、山を下りて海に出るか、東へ14、5キロ飛んで八郎潟に出るしかないというような所です。飛翔力のある彼らにしてみれば、その程度は全く苦にならないのかもしれませんが、なにもわざわざこんな奥に引っ込まなくてもという感じです。

このコロニーについては1980年台の初めにかなり詳しく調査されていて、当時、推定で100つがい余りが営巣していたと報告されています(Ogasawara et al. 1982)。これが1955年まで遡るとずっと増えてだいたい250つがい。アオサギ単独コロニーとしては当時おそらく国内最大級だったはずです。

ここは営巣環境としては申し分ないところで、人里離れた場所である上に、巣がかけられているのは立派な秋田杉です。同報告書には、『このアオサギコロニーは面積2.48haにわたり、スギ約250本の天然林の地域である。この天然スギは胸高幹囲2.40-3.60m、高さ約30-40mの高木で、樹令約50-250年(平均150年)のものが多い』とあり、とても贅沢な居住環境であることが想像できます。

ただ、私がここを訪れた際、コロニーの傍らの木碑に「青サギ群生地」と書かれていたのには閉口させられました。植物でもないのに「群生」はあんまりです。このコロニーについては、上述の調査以降、これといった記録が無く、現在どのような状況なのかよく分かりません。近年、この地域では平地のもっと水辺に近いところにいくつかコロニーができているようですし、男鹿のコロニーが現在も昔のような規模で維持されているとはちょっと考えがたい気がします。

コロニーの位置(大きな地図で見る

次は尾鷲市のコロニーです。ここのアオサギが暮らしているのは尾鷲湾の入り口の佐波留島という無人島。アオサギとゴイサギの混合コロニーで、アオサギの繁殖個体数は1970年の調査で300〜350つがいと推定されています(倉田、樋口 1972)。記録上、国内でこれを凌ぐ大規模コロニーはごくわずかしかありません。少なくとも、1970年当時は国内最大のコロニーだった可能性は高いと思います。この報告はこちらのページで全文が読めますので興味のある方はどうぞ。なお、このコロニーも入手できる情報は上述のものだけで、その後の状況は分かりません。無人島ですし、餌場に大きな変化がなければ消滅はしていないと思いますが、どうなのでしょう。現地の状況が分かる方がいればお教えいただければ幸いです。

この他にもこれまであるいは現在、これらよりさらに大規模なコロニーはいくつも存在したと思われます。そして、その中で現存する国内最大規模のアオサギコロニーといえば、おそらく網走湖のコロニーをおいて他にないでしょう。網走湖コロニーはこちらのページに書いているように、2009年の時点で推定450〜500巣という巨大コロニーです。発見されてからでもすでに60数年。巣がかけられているのはハンノキ、ハルニレ、ヤチダモといった巨木で、おまけに林床は天然記念物の湿生植物群落で人が立ち入れないという、営巣環境としてはまず理想的な場所です。餌場も網走湖をはじめオホーツク湖沼群をほとんど独り占めしています。よほどのことが無い限りこの先も国内最大規模の地位は揺るがないでしょう。ただ残念なのは、それほどのコロニーでありながら認知度が極めて低いこと。地元の人にさえほとんど認知されてないという有り様なのです。これはいけません。コロニーのある大空町(旧女満別町)には、町の鳥をアオサギにするよう是非、検討してもらいたいものです。


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