アオサギを議論するページ

個体数

個体数

2002/09/27(Fri) 23:00      まつ@管理人      ブラックバス

1960年頃、北海道のアオサギ繁殖地はわずか5、6ヶ所しかありませんでした。昔のことなので見落としがあるかもしれませんが、ともかく今のようなコロニー乱立状況とは全く異なっていたようです。現在、北海道のコロニー数は約65、およそ3500つがいが生息していると推測されます。では、1960年当時の生息数はどの程度だったのでしょうか。昔の資料を見る限り北海道で最も大きなコロニーがあったと思われるのは苫小牧の明野コロニーです。そこにはその昔1000羽をはるかに超える飛来数があったといいます(ただし1960年前半には既に100巣を切るほどになっています)。この数値を鵜呑みにし、仮に明野に500つがいの非常に大きなコロニーがあったとします。けれども他のコロニーは多いところでも当時せいぜい200つがいです。とすればこの頃の北海道のアオサギ生息数は、よほど多く見積もっても1500つがいがいいところでしょう。それでも現在のつがい数の半分にも達しません。そう考えると、コロニー数の増加とともに生息数自体も増えているというのはほぼ間違いないところだと思われます。

さて、問題はなぜアオサギが増えてきたのかという点です。アオサギの増加については北海道だけでなく全国的な傾向なのですが、これについて本州で鳥を研究されている方々の間で興味深い話が交わされています。アオサギの増加にブラックバスが関係しているのではないかというのです。こと北海道に関してはブラックバスの生息域はまだ限られておりアオサギへの影響はほとんどないように思われるのですが、実はそんなことはありません。なぜなら、北海道のアオサギが冬を越す場所はブラックバスが大量に生息する本州以南だからです。通常、アオサギの個体数を制限する主要因は冬期間の餌不足であり、秋に南へ渡ったアオサギが翌春ふたたび戻ってこれる可能性はそれほど高くありません。しかし、もし従来の餌にブラックバスが新たなメニューとして加わるなら、飢えの危険性がそれだけ低くなり、結果として以前より多くのサギが冬を生き延びるようになるかもしれません。そうなると北海道の繁殖地へ戻ってくるアオサギの割合も多くなるわけです。専門家によれば、ブラックバスは在来魚のように深いところでは越冬しないということで、これはカワウなどでは実際に冬場の餌条件を向上させる一因になっているとの指摘があります。カワウ同様、魚食性のアオサギに同じことが起こったとしても不思議ではありません。

今のところ全て推測の話ですし、これだけがアオサギの増加の原因というわけでもありません。けれども、もしこれが本当なら人間の行為が環境を変化させたことについて真剣に議論、検討される必要があります。北海道ではブラックバス同様、移入種であるアライグマによって、アオサギの営巣地が消滅し、繁殖形態にも少なからぬ影響が出ています。さらにブラックバスについて言えば、新たな場所で捕獲されたというニュースが最近相次いでいます。こうなると越冬期の生存率もさることながら繁殖期の生息状況にも影響が及ぶ可能性が出てきます。5年後、10年後、果たしてアオサギはさらに増え続けているのでしょうか? あるいは予想もしない展開が待っているのでしょうか?

アオサギは体が大きいことに加え集団で生活しているためよく目立つ存在です。そのため彼らの身に何かが起こった時にはその動向を比較的早く察知することができます。けれども、忘れてならないのはアオサギに何か異変が起こった時にはもっと人目についかない他の多くの種にも同じように異変が起きているはずだということです。そういう意味ではアオサギには環境指標種としての役割が課せられているのかもしれません。ともあれ、アオサギの身辺に起こる変化を見過ごさないことが大切でしょう。

2002/08/25(Sun) 20:13      まつ@管理人      北海道の世帯数

このサイトに北海道のコロニーの一覧表を載せています。新しい情報が入るとたまに手を加えているのですが、少なくとも現存コロニーについてはほぼ網羅できたのでないかと思ってます。そんなわけで、試しに北海道で繁殖するアオサギの総個体数を概算してみました。もっとも、営巣数は部分的にしか調べていないので、未調査のコロニーについてはあくまで概数です。従って目安程度のものと考えて下さい。で、その数ですが、北海道全体で約3,500つがいです。個体数にすると単純にこの倍の7,000羽、また、それぞれのペアが3羽ずつヒナを巣立たせるとして、繁殖が終わった夏の段階では17,500羽となります。実際は繁殖に参加しない個体もいますし、繁殖しても途中で失敗する場合も多いので、数値はかなり前後すると思います。

さて、皆さんはこの数を多いと思われますか、少ないと感じますか?
この状況を人間社会に置き換えると、北海道内に小さな村が65ヶ所(これは道内に現存するコロニーの数です)点在していて、それぞれの村の規模が平均で約50世帯という状況です。実際は数世帯しかない村もあれば300世帯というかなり大規模な村もあります。が、いずれにせよ北海道全体でもたかだか3,500世帯なのです。
ところで、北海道のヒトの世帯数は今年6月末現在で2,495,902に達します。アオサギと較べれば桁違いどころか3桁も違います。あまり意味のない比較かもしれませんが、人間の圧倒的多さに較べれば、アオサギなど吹けば飛んでなくなるような数なんですね。

「アオサギって最近どこにでもいるよ」「少し増えすぎだね」とかいう言葉を耳にするたび、「何か忘れてやしませんか」と思ってしまうのです。


2002/08/27(Tue) 19:46      まつ@管理人      フランスでは

個体数の話が出たついでに、もう少し他の地域についても調べてみました。とはいえ、残念ながら国内での調査は特定のコロニーや地域に限られており、例えば本州、四国、あるいは九州にどれだけのサギが生息しているのかとなるとおおよその数さえ分からないのが実状です。これは日本だけでなくアジア、アフリカの多くの国でも同じです。しかし、さすがにヨーロッパは違っていました。ほとんどの国が国内全域での調査を行っているのです。したがって、繁殖数がヨーロッパ全体でどのくらいかということまで分かります。2000年に出版されたHeron Conservation (J. A. Kushlan and H. Hafner 著)という本によると、その数は15-18万つがいと推測されています。密度でいうと大雑把に計算して100平方キロあたり2.9-3.5つがいになります。ちなみに北海道での密度は4.5つがいです。少し乱暴な比較ですが、両地域の地理や気候など全部無視してこれだけ近い値がでるというのはちょっと興味深いですね。

さて、上に紹介した本には各国別のアオサギの変遷についての記載もあります。この中で、最も詳しく記述されているフランスの事例を紹介します。以下、要約です。

「古来、フランス皇族の狩猟鳥だったアオサギは18世紀まで広く保護されてきました。ところが、19世紀になると害鳥とみなされ大がかりな駆除が始まります。このため、20世紀が始まる頃にはアオサギはフランス全土からほぼ絶滅してしまいました。唯一残ったコロニーは個人所有の敷地内にただ1ヶ所という有り様でした。その後、第一次世界大戦が勃発、アオサギの狩猟が下火になったために、かろうじて2つのコロニーがつくられました。第二次世界大戦の時も同様の状況で、アオサギは徐々に分布域を拡大し個体数も増えてきました。1975年以降は法的に保護されたこともあり、アオサギはその後も順調に増え続け、1994年にはコロニー数658、つがい数26,687に達しています。」

アオサギが人間の都合でどれだけ翻弄されてきたか、これはほんの一例にすぎませんが、世界中いたるところで同じ様な歴史があるはずです。アオサギとヒトとの適切な関係を模索する上で、まず知るべきは両者の辿ってきた歴史なのかもしれません。


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