アオサギを議論するページ

コロニーの移設

コロニーの移設

2011/02/19(Sat) 23:28      きんぴら      アオサギのねぐら誘致について

専門学校でサギの集団ねぐらについて研究しています。研究に行き詰った時には、よく拝見させていただいています。

今日研究についての話し合いがあり、その内容がアオサギのねぐら誘致はできるのか、アオサギを誘致してメリットがあるのかというものでした。この話し合いは解決できませんでした。アオサギを誘致できないかと考えている場所はアマサギが約200羽規模のねぐらを形成している場所で、他にもダイ・チュウ・コの各サギもねぐら利用しています。

勝手なお願いですが、アオサギのねぐら誘致は可能か、又そのメリットについて皆様のお知恵を拝借したく書き込ませていただきました。よろしくお願いいたします。


2011/02/21(Mon) 07:06      まつ@管理人      Re: アオサギのねぐら誘致について

こういうご質問は大歓迎ですよ。まさにこの種の議論をするために設けている掲示板でもありますから。

まず、ねぐら誘致のメリットからお答えします。このご質問、私、最初は単純にアオサギのねぐらをある場所から他の場所へ誘致するケースを想定しました。そうではなく、別種のサギ類が利用している既存ねぐらにアオサギも加えたいということなのですね。ということは、現段階で、アオサギが現在のねぐらを将来的に利用できなくなるか、人との間に何らかの深刻なトラブルがあるなど、ねぐらを移さざるを得ない理由があるものと想像されます。ということは、その問題を解決できるのが誘致のメリットということになるのでしょうけど…。きんぴらさんが尋ねたかったのは、誘致することで誘致先のねぐらに何か良いことが起こるかということですね、たぶん。状況がよく分からないのですが、率直に言って、この措置によるサギ側の利点というのはとくに無いと思いますよ。無理に理屈をつけるとすれば、数が増えて捕食圧が減少するというくらいでしょうか。むしろ過密化による弊害のほうが大きいような気がしますが。この辺はねぐらのある場所の条件や誘致するアオサギの個体数によって想定される内容が違ってくるでしょうね。

つづいて、ねぐら誘致の可能性についてです。結論から言うと、誘致は可能だと思います。ねぐらを人為的に誘致した例というのは私は知りませんが、コロニーを別の場所に誘導した例ならいくつか挙げることができます。ひとつ目は当ページ(一番下)に書いているアメリカ、ロングアイランドの事例で、もとあったコロニーから営巣木そのものを移設してしまうというものです。そこに書いているように、約2キロ離れた誘致場所に大きな木を50本も移動しています(写真)。これについては、概要のみであればこちらのページで見ることができます。

もうひとつの例は、木を植えるなどして営巣環境を一からつくってしまうことです。これは”Heron Conservation”という本で紹介されていたフランスのカマルグの事例で、誘致場所に木を苗から植え、10年がかりで営巣可能な林に育てています。この結果、300つがい以上のサギ類の誘致に成功したということです。これら2つのプロジェクトでは、誘致する際、いずれもデコイと鳴き声を録音したテープが使われています。

ねぐらと違ってコロニーの場合は巣という顕著なマーカーがあるので、巣だけを移設するという手もあります。これは北海道北見市の事例で、たった3巣を移設しただけで、新たなコロニーの創設に成功しています。これは個人が趣味的に行ったもので、デコイやテープ等は利用しなかったようです。なお、この事例では旧コロニーと新コロニーの間は川沿いに約2キロ離れています。それだけ離れていてもわずかな巣を起点に見知らぬ場所にコロニーができるわけですから、巣の誘引効果がいかに高いかということですね。

ということで、ねぐらを移設する場合はコロニーのように巣をマーカーにできないのが残念ですが、デコイや鳴き声のテープ等を利用すれば誘致はそれなりに可能なのではないでしょうか。

サギ類と人との間でトラブルが絶えない現代において、コロニーやねぐらの人為的移設の研究は、実際的価値の非常に高いものだと思います。良い研究成果が得られるといいですね。何か進展があればまた是非ご報告いただければと思います。


2011/02/21(Mon) 11:26      きんぴら      Re: アオサギのねぐら誘致について

ご返信・ご教授ありがとうございます。大変参考になります。言葉足らずで申し訳ありませんでした。現段階でアオサギを誘致しなくてはならない状況にはありません。調査場所がラムサール条約湿地であり観光客が大勢来ます。ここのアオサギは人間に敏感に反応している様なので、人的ストレスがねぐらを形成しない原因になっていると考えています。別の調査場所では40羽規模の小さいねぐらではありますが確認できた場所がありました。ここは果樹園に囲まれた山の麓にあるため池でした。侵入が容易ではない所でした。20倍のフィールドスコープでぎりぎり確認できました。地域差があると思いますがアマサギ等に比べるとアオサギは人との接触が限りなく少ない場所をねぐら利用している様に思います。
サギの言葉がわかるようになりたいと思う毎日です。ありがとうございました。


2011/02/21(Mon) 12:02      まつ@管理人      Re: アオサギのねぐら誘致について

「サギの言葉が分かるようになりたい」という気持ち、とてもよく分かります。サギと人の共存を考えるとか言ったところで、サギの生態を調べて、分析、評価し、といった客観的な態度だけでは本当に実のある成果は得られないんですよね。その根底として相手が何を考えているか知りたい、言葉さえ分かれば、という切実な思いがなければ。きんぴらさんの言葉でそのことを改めて思い直すことができました。
良い研究になることを祈ってます。

2003/02/07(Fri) 00:54      まつ@管理人      引っ越し

営巣地の保全について、Waterbirdsという雑誌に興味深い報告がありました。ゴイサギの話ですが、アオサギにも共通する話題なので紹介してみます。場所はカリフォルニア、ロングビーチの軍港で、これの閉鎖に伴い新たな港湾を再開発することになり、そこにあったゴイサギのコロニーが別の場所へ移設されたという話です。サギに関しては、木を植えるなどして人工的にコロニーを創設する試みはこれまでにもいくつかありましたが、コロニーそのものを移動したというのは無かったのではないかと思います。この報告を読むと、50本もの木を2kmも離れた場所に丸ごと移動しています。写真には20mにもなる大木がクレーンで持ち上げられている様子が写っており、相当大規模な引っ越しだったようです。この試みは成功し、移設先のコロニーで何百羽ものヒナが誕生しています。

日本ではサギに関してこの種の試みはまだないと思いますが、サギとヒトとの共存がどうしても無理な場合、コロニーの移設というのは実際的な手段のひとつとして、今後真剣に検討される必要がありそうですね。

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