アオサギを議論するページ

アオサギの体格

もう長いことアオサギについていろいろ書いてきているわけですが、その割りにはどうでも良いような記事ばかりで、アオサギについての基本的な情報をほとんど書いてこなかったような気がします。たとえば、身体の大きさとか図鑑に載っているような情報ですね。そこで、今回はまさにその身体の大きさについて書いてみたいと思います。

以前は、アオサギは国内での生息数が少なかったというのもありますし、基本的に人への警戒心が強いということもあり、間近にアオサギと遭遇した人はそんなに多くありませんでした。それが、最近になって生息数も増え、とくに都市部のアオサギは人に慣れるようになったことで、至近距離でアオサギを見かける機会が格段に増えました。その結果、改めてアオサギの大きさに驚いたという人も多いのではないでしょうか。首を伸ばすと1m近くになり、翼を広げると大人が両腕を広げるよりもさらに大きく2m近く(175-195cm)に達します。そんなのがいきなり目の前に現れたら、小さな子供なら怖くて泣き出してしまうでしょう。

measureところで、野外では同じように見えるアオサギも、生きものですから当然一羽一羽体格が違います。雄と雌の間にも体サイズに違いがあることが分かっています。右の4つのグラフは雌雄の体格を比べたものですが、翼長、嘴峰長、ふ蹠長、体重のいずれの数値も雄が雌を上回っています。もちろん、グラフで雌雄の重複部分が多いことから分かるとおり、雄より体格の良い雌もたくさんいます。雌のほうが雄より大きいペアも普通にいると思います。なので、体格は雌雄判別の絶対的な指標にはなりません。私個人の観察経験からいうと、雄と雌の違いは体格よりもむしろ頭部のボリューム感の違いに表れるように思います。雄の頭は大きくがっちりしていて、雌の頭はほっそりと華奢な感じなのです。これはそのつもりで見ると案外区別できるものなので、つがいを観察する機会があればぜひチェックしてみて下さい。

体格については、雌雄の間で違いがあるように成鳥と幼鳥の間でも違いがみられます。これについては20年ほど前に弘前大学の前川さんと佐原さんが成鳥と幼鳥の嘴峰長を計測していて、予想どおり幼鳥のほうが短い(成鳥と亜成鳥:117mm (n=65)、1年目幼鳥:109mm (n=34))ことが分かっています。つまり、幼鳥は巣立ち時にはまだ成鳥のサイズには達してないということなのですね。なお、この研究では亜成鳥という語が使われていますが、これは大雑把に2年目の幼鳥とみなして差し支えないと思われます。

アオサギの体重については上のグラフで紹介したのよりもう少し極端な例も報告されています。これはドイツからの報告ですが、太ったアオサギは2,300gもあったそうです。そして、痩せ細ったアオサギはなんと810gしかなかったのだとか。

鳥はほぼ全身羽毛に覆われてますから、外見では大きさの違いがなかなか分かりません。けれども、実際はこなんなにも違うものなのですね。体重ではそれがとくに顕著です。餌獲りの下手な幼鳥はほんとうに食うや食わずで生きています。以前、死んだ幼鳥の胃の中を見たことがありますが、何の腹の足しにもならないような小さな水生昆虫が何匹か入っているだけでした。あれでは体重が1キロを切ってしまうのも頷けます。そんな絶望的な栄養状態にありながら、一方で身体も大きくしていかなければならない…。これは相当に大変なことだと思います。


『幻像のアオサギが飛ぶよ』書評

reviw当サイトの掲示板にもときどき投稿して下さっている佐原さんが、先日、『幻像のアオサギが飛ぶよ』という本を出されました。佐原さんはアオサギやゴイサギなど鳥や魚の生態を長年研究されてきた方ですが、今回の本はタイトルから推察されるように純粋な生物学からはかなりかけ離れた内容になっています。ひと言で言うと、アオサギと人の関わりを文化史の面から考察していったものです。この手の話には私も一方ならぬ関心があり、ことあるごとに当サイトでもあれこれ書き散らかしてきました。じつはそうした私の興味自体、佐原さんから相当な影響を受けてきたのです。

そんなことで、先日、新聞に同書の書評を書きました。掲載誌は佐原さんの地元である津軽地方の陸奥新報で、掲載日は4月1日です。書評を読んで興味をもたれた方は本のほうもぜひ読んでみて下さい。

人とアオサギの文化史

古来、人は動物にさまざまなイメージを付与してきた。アオサギにあってもそれは例外でない。例外でないどころか、イメージの豊かさという点では他のもっと身近な動物に勝るとも劣らないだろう。

本書は、そうしたアオサギのイメージ、「アオサギ観」に焦点を当て、人とアオサギの関わり合いの歴史を紐解いたものである。まずタイトルが印象的だ。これは近代詩の一節からとられたものだが、日本人のアオサギイメージの一典型として示されている。このように、著者は近代詩をはじめとした古今東西の文献資料を幅広く渉猟し、それら一連のテキストから日本人独特のアオサギ観を洗い出す。

そして、そこで浮き彫りになるのは「憂鬱で不気味な」アオサギである。一方、西洋のアオサギは「高貴で精悍だが孤独」だという。どこでこのような違いが生じたのか? なぜ日本のアオサギ観はこうもネガティブなのか? その理由として提示される事実はなかなか衝撃的だ。日本のアオサギはかつて妖怪視されていたというのである。ところが、時代をさらに遡ると田を守る穀霊であったともいう。穀霊から妖怪への大転換。なぜそんなことが起こったのか? そこにはまたシラサギを交えての新たな謎解きが控えているのだ。人とサギ類の関わりはかくも奥深い。

本書の特徴は、こうした謎解きが文献からの推測にとどまらず、生物学的事実に裏付けられていることにある。アオサギの登場するさまざまな文化史的テキストを縦糸に、生物学的知見を横糸に、日本人のアオサギ観を丁寧に織り上げる、これは相当にしんどい作業である。にもかかわらず、堅苦しさを感じることなく著者と一緒に謎解きが楽しめるのは、「(アオサギの)研究と並行して、アオサギゆかりの品々を集め始めた」という著者の軽やかで旺盛な好奇心が語りのそこかしこに感じられるからだろう。

なお、本書が単なる碩学の書ではないことは強調しておかなければならない。人とアオサギの関わりの歴史を通して生きものに親しみを感じ、ひいては生きものの保全に関心をもってほしい、それが本書に通底する著者からのメッセージである。本書を読んでアオサギと共有してきた歴史を心の内に感じられれば、アオサギはもはや得体の知れないよそ者ではない。もちろん妖怪でもない。いまや我々は共感できる隣人になり得るのである。


サギ類一斉調査ご協力のお願い

《注意》この記事はエイプリールフール用に書いたものでまったくの出鱈目です。お間違いなきよう。

すっかり春めいてきましたね。ここ北海道では南からのアオサギの群れが続々と到着し、日ごとにコロニーが賑やかになっているところです。

さて、すでにいろいろなところで話題になっているとおり、今年は全世界でサギ類の一斉調査が行われています。サギというと大きくて目に付きやすいため調査も十分になされていると思われがちですが、これが意外にほとんど調査されていないのですね。比較的丁寧に調査されているのはヨーロッパ、あとは北米ぐらいなもので、そのほかの地域は日本も含めもう全然ダメなのです。そんな状態ですから、今回のプロジェクトに寄せる期待は嫌が上にも高まります。

今回の調査はGoogleが進めているGoogle Maps of Wildlifeプロジェクトの一環で行われるもので、小型機を利用し上空からサギ類のコロニーを探索するのが目的です。ただ、困ったことに現段階で調査者がまだ全然足りてないのですね。日本での調査時期は5月、6月ということで、もうひと月しかありません。ところが、北海道地域だけでも調査スタッフが少なくともあと10人は必要という状況なのです。そこで今回のプロジェクトに携わっている者のひとりとして今回あらためてご協力をお願いしているような次第です。

本年度はコロニーの位置とおおよその規模の把握が目的で、種ごとの営巣数など詳細な情報収集は求められていません。そのため、調査者には特別な能力は必要なく、車が運転できるていどの普通の視力があって飛行機が苦手でなければどなたでも参加可能です。

なお、今回のプロジェクトはGoogleに加えてNational Geographicも協賛という形で参加しています。なので、ご想像のとおり調査資金はけっこう潤沢で、調査に参加される方には相当な謝礼が用意されているようです。まあ謝礼はおまけのようなものですが、航空機センサスなど個人ではなかなか企画できるものでありませんし、またとない貴重な体験になるのは間違いないと思います。そんなわけで、とりあえず以下に募集の詳細を貼っておきます。ご協力いただける方には私からもアオサギカレンダーを差し上げますので、お時間に都合のつく方は是非ご検討ください。どうかよろしくお願いいたします。

『Google Map of Wildlifeプロジェクト』調査者募集のお知らせ


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