アオサギを議論するページ

白いアオサギ

イギリスにある王立鳥類保護協会のコミュニティページに白いアオサギが紹介されていました。

以前、当サイトの掲示板でアルビノのアオサギが話題になったことがあります。右の写真のアオサギはそのとき紹介されたのと同じ個体です。このアオサギと今回紹介したアオサギ、何が違うか分かるでしょうか? よく比べてみると、右のアオサギは目が赤っぽいのに対してイギリスのアオサギは通常の黒い目をしています。また、くちばしの色も違いますね。写真のアオサギのくちばしは完全に黄色です。これに対して、イギリスのアオサギは黒と黄色で、通常の幼鳥(この個体はどうも幼鳥のようです)と変わりない色です。つまり、羽が白いこと以外は全く普通のアオサギなのです。

じつはイギリスのアオサギはアルビノではないのですね。では何者なのかというと、いわゆる白変種と呼ばれる個体です(白変種と言っても種は同じです)。アルビノはメラニン色素が全く無いかあるいはごく少量しか作れないために体全体が白くなります。これは遺伝学上の疾患です。一方、白変種の場合は色素は普通に作れますし遺伝的にも正常です。これは人間で同様のケースが無いので想像しにくいのですが、たとえば血液型にA型があったりB型があったりするのと同じようなものだと思います。ただ、白変種の場合は血液型の例とは異なり見かけが全く違いますし出現頻度が極端に少ないので余計に目立つわけです。ここで出現頻度が少ないというのは重要で、もしこれが種の中で一定以上の割合で普通に存在するようだと、単に二型があるとみなされるのでしょうね。たとえば、サギでいうとクロサギに黒色型と白色型があるようなものです。じつは、アメリカのオオアオサギ(Great Blue Heron)にもフロリダのほうに白色型がいてGreat White Heronと呼ばれていたりします。そう考えると、たまにこんな真っ白なアオサギがいてもびっくりするほど不思議ではないのかもしれませんね。

シーズン最終盤

ここ札幌周辺では、アオサギのシーズンもそろそろ最終盤というところです。コロニーを訪れるたび、空になった巣が増え、見かけるヒナの数がだんだん少なくなってきました。

この時期になると、ヒナが巣立っていく他はとくに変わったことは起こりません。親が餌を運んできても、一時期のように兄弟間の壮絶な争いはなく、餌の食べ方にもかなり余裕が感じられるようになります。他のヒナが餌をもらっているのに、我関せずとただ眺めているだけのヒナもいて、食欲だけをモチベーションに生きてきたあの同じヒナとは思えないほどです。ほんの何週間かのことなのですがずいぶん変わるものです。

ということで、ここまで大きくなると飢えて死ぬことはまずありません。あとは時が来れば思い思いに巣立っていくだけです。何事もなく…。

と思っていたら、写真のような状況を目にしました。この写真、何がおかしいのか分かるでしょうか? 巣をよく見ていただくと、右方向に45度ばかり傾いているのが分かるかと思います。巣が崩れたのではありません。じつは、この巣のかかっている太い枝が枝ごと折れて傾いたのです。この結果、巣の位置はもとあった場所から5、6もメートル下がってしまいました。よくこの程度で済んだものです。災難とはいえ案外ラッキーなヒナたちなのかもしれません。

ここは3羽兄弟。皆、無事でした。この時点で孵化後8週目か9週目。ご覧のように既に巣から出て歩き回っており、おそらくもう飛ぶこともできるはずです。枝が折れるのがあと半月も早ければ危ないところでした。

巣も、一応、傾きながらもついています。これは意外と重要なことで、巣があるのと無いのとではずいぶん違うのです。この大きさのヒナですから巣が無いと腰を下ろして休むこともできない、ということはありません。ただ、これが無いと食事が満足にできないのです。アオサギのヒナはあるていど大きくなると口移しで餌をもらいます。ところが、アオサギというのは兄弟でわいわいやりながら乱暴に親のくちばしを引っ張るので、かなりの餌が誰の口にも入らず下にこぼれてしまうのです。巣はそのための受け皿でもあります。これが無いとどうなるかはご想像の通りです。

幸い、この巣は傾きながらも受け皿の役目は果たしているようです。親から餌をもらうのを見ていると、バラバラと下に落ちる餌もいくらか見えますが、巣に引っかかる餌もけっこうあります。それを親が巣を離れた後にヒナたちがひとつうひとつ拾い集めるのです。もうそれほど空腹でないのか、親鳥がいたときあれほど騒々しく餌をねだっていたヒナたちも、自分たちだけになった後はもう誰と争うでもなく、思い出したようにゆっくりゆっくり餌をついばんでいきます。

そんな光景が見られるのもあとわずかとなりました。

名寄コロニー消滅

北海道名寄市のアオサギコロニーは、営巣数200を超え、規格外の網走湖コロニーを除けば、道内の現存コロニー中、おそらく最大クラスだと思います。天塩川流域に点在するコロニー群の中ではペンケ沼コロニーと双璧をなすスケールの大きな営巣地です。

写真がそのコロニー。手前のヤナギ林の奥が川になっていて、その向こうに小高い丘があります。この丘の緑の濃い針葉樹の林がコロニーです。ちょうど営巣期に撮った写真で、巣にいるアオサギが白く点々と見えています。コロニーの立地環境としては申し分のないところです。

このコロニーがもうひとつ素晴らしいのは、地元の人をはじめ多くの人々が好意的に見守ってきたということです。じつは、写真の森も、以前の所有者が林を手放すことになった際、売却先によってはアオサギがどうなるか分からないということで、ある方がわざわざアオサギのために買い取ったものなのです。

ただ、そんな恵まれた環境をもつ名寄コロニーにもひとつ落とし穴がありました。数年前からオジロワシがたびたびコロニーを襲うようになっていたのです。これについては、アオサギのことを気にかけ、毎年のように記事を書いていた地元の名寄新聞がその様子を伝えています。3年前の記事です。⇒ 名寄新聞(2008年4月10日付け)

今年、ここにアオサギが飛来したのは4月4日だそうです。しかし、相変わらずオジロが徘徊してなかなか落ち着かなかったのだとか。そして、それからひと月あまり、名寄のサギたちはとうとうコロニーを放棄してしまいました。毎年毎年、執拗な襲撃を受け、もう限界だったのでしょう。これも先日、名寄新聞が報じていました。⇒ 名寄新聞(2011年6月9日付け)

このような大規模コロニーの消滅は、道内では4、5年に1度くらいの頻度であります。ここ20年ではっきり特定できているのは、91年のコムケ湖、97年の野幌、04年の浦幌、それに今回の名寄で4度目です。このうち、コムケ湖のコロニーについては今回と同じくオジロワシが原因と見られています。近年、オジロは内陸に勢力を拡げていますから、他のコロニーもうかうかできません。

もっとも、オジロがアオサギをいつも襲っているのかというと、そういうわけではありません。日常的にアオサギのコロニー付近にいても全く気に留めないオジロもいます。この辺は個体差が大きいようです。名寄の場合は当たりが悪かったとしか言えませんね。

自然の中で起こったこととはいえ、あれだけのコロニーが放棄されるのはやはりショックです。新聞にも書かれていますが、オジロがいる限り、来年、サギたちが戻ってくることはないでしょう。今後は次にどこで営巣するのかが焦点になります。場所によっては人とのトラブルが起きかねませんから。ただ、過去の事例を見ると、放棄後のサギはえてして人の生活圏に近いほうへ向かう傾向があるのです。道内でいうと、野幌森林公園内で営巣していたアオサギが、放棄後、札幌市街に3ヶ所に分かれて新たなコロニーをつくったのが良い例です。他にも同じような例はいくつもあります。逆に、さらに山奥に引っ込んだという話はひとつもありません。

あまり市街地に近くないどこか適当な場所に、名寄のサギたちが落ち着けるスペースが残されていることを期待したいものです。ワシに追われた上に人にも追われたのではたまりませんからね。

アオサギのためにも脱原発

普段はアオサギに関係のないことはここには書かないようにしています。私がここに余計なことを書くことで、純粋にアオサギのことを知りたくてここを訪れる人が中立的な視点を保てなくなったら困りますから。たまたま私の意見に同意してもらえれば良いですが、反感をもたれると本来提供できたはずの情報も提供する機会を失ってしまいます。それはアオサギにとって不幸なことですし、何のためにこのようなサイトを公開しているのか分かりません。

だから、価値観や主義にかかわることはここでは極力書かないようにしてきました。しかし、これは別です。私も人間ですからまずは自分を含め人間のことを心配します。けれども、これは人間だけの問題ではありません。アオサギを含めあらゆる野生生物にとっての問題でもあります。福島第1原発のすぐ近くでは、多くの野生生物が、今この瞬間にも大量の放射線を浴びながら何も知らずに暮らしているはずです。防護服もつけず全身を放射線に晒したアオサギが、汚染水に住む猛毒の魚をパクパク食べているかもしれません。全てわれわれ人間のせいです。

さようなら原発1000万人アクション」が脱原発を目指して昨日15日より署名活動をはじめました。署名用紙はサイトに行けばダウンロードできますし、こちらの署名ページからネット上で直接署名することもできます。もちろん私も署名しました。今回のアクションが人間だけでなくアオサギを含め全ての生き物に対して希望をもたらしてくれることを切に願います。

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