アオサギを議論するページ

シーズン最終盤

7月も終わりますね。皆さんいかがお過ごしでしょうか?
札幌あたりではアオサギの子育てシーズンもそろそろ終わりです。コロニーにボーリングのピンのように突っ立っていたヒナたちも、ここ一週間くらいでぱたぱたっといなくなってしまいました。今は全盛期の1割残っているかどうかというところです。

この時期になると、残っているヒナもあちこち飛び回り、コロニーでは様々なことが無秩序化します。ヒナが自由に飛べるため、親から十分餌をもらえなかったヒナが親の後を飛んで追い回すとか。しかも、それが本当のヒナならまだしも、自分の子か余所の子かさえよく分からなくなっている様子。ヒナのほうは自分の親でも余所の親でもとにかく餌がもらえればいいのでしょうけど、親のほうはやりきれないでしょうね。

そんな狂騒状態が見られるのもあと数日。ぼろぼろになった巣も、その巣を支えてきた木々も、来年の3月までひとまずお役ご免です。


カラス禍

アオサギのヒナにとってカラスはいつも厄介者。毎年、あちこちで相当数のヒナが犠牲になっています。私が普段よく訪れるコロニーでも毎年のようにヒナが襲われるのを見かけます。それがどういうわけか今年はとくにひどいのです。

襲撃者はおそらくハシブトガラス。ハシボソガラスが襲っているのはこれまで見かけたことがありませんし、彼らはよほど小さなヒナが無防備な状態で晒されることでもない限り、通常はアオサギには無害なのではないかと思います。問題はハシブトガラスのほうです。

カラスの標的になるヒナは齢でいうと3週目程度。ヒナがそれより小さい時は親が四六時中付き添っているので、さすがのカラスも襲いません。一方、4週目以降になるとヒナがぐんと大きくなってカラスの手に負えなくなります。親が巣を離れ、小さなヒナだけが残された状況がカラスにとっては狙い目です。

ただ、ヒナも無抵抗にやられるわけではありません。3週目も後半にもなれば、ヒナはカラスより半回りていど小さいだけですし、3羽、4羽の兄弟が束になってカラスを威嚇するわけですから、カラスといえども思うようには攻撃できません。そもそも、そうでなければ親もヒナだけを置いて出ていったりしないはずですし。大丈夫だと思うからこそ巣を離れるのでしょう。そんなことで、カラスは潜在的な捕食者で脅威ではあるけれども、日常的にヒナが襲われるというわけではないのです。

ところが、今年は違いました。5月末からここひと月ほど、カラスによる襲撃が頻繁に繰り返されているのです。その上、今年のカラスはヒナに対する攻撃の手際がとても鮮やかで、1、2分という短時間でヒナを巣から引きずり出してしまいます。しかも、4週目半ばにもなるような大きなヒナまで犠牲になっています。例年だと何羽ものカラスでじわじわと巣を取り囲むこともありますが、今シーズンに限っては襲撃はいつも単独で行われ、周りに仲間がいる様子もありません。そんなわけで、今年のカラスはもしかするといつも同じなのではないかと。しかも、悪いことに、その1羽が大胆な上にテクニックをもったやり手なのです。こんなカラスに居座られてはコロニーのサギたちはたまったものではありません。

適当な写真が無いので襲撃の様子を絵にしてみました。一見、サギとカラスがのどかに会話でもしているかのようですが、実際は双方殺気立っていて見ているほうも写真を撮るような心境ではありません。ただ、状況はこの絵でほぼ分かっていただけるのではないかと思います。カラスとヒナの大きさはだいたいこんなものです。この絵ではヒナは2羽しか描いていませんが、3羽のときもあれば4羽のときもあります。もっとも、このくらいの大きさになれば、4羽いたとしてもカラスの前面に立てるのは、巣の構造上、2羽かせいぜい3羽というところ。なので、兄弟全員が攻撃に参加するということにはなかなかなりません。

さて、そのヒナたちがカラスに向かって次々とくちばしを突き出してくるわけです。その突っつきの早さはヒナとはいえ親鳥と変わりませんから、カラスにしてみればかなりの恐怖感があるはず。カラスはその突っつきを適度な距離をとってかわしながら逆に攻撃します。攻撃といっても、カラスのほうは相手にダメージを与えるのが目的ではありません。あくまで巣から引きずり出しさえすればいいので、ヒナの身体のどこかをくわえようとします。一方、ヒナのほうはくちばしだけで攻撃していればいいものを、自分をできるだけ大きく見せたいのか、絵のように翼を広げて威嚇します。これはカラスには好都合です。掴む場所をヒナに差し出してもらっているようなものですから。

カラスの頭のいいところは、埒があかないと見るとすぐに別の枝に移ってヒナの背後から攻撃をしかけることです。絵のように下に横枝が何本も出ているような巣はカラスにとっておあつらえ向きの攻撃対象。逆に言えば、そうした横枝をもたない巣はカラスに対して安全な巣ということになります。もちろん全く枝が無いのが理想ですが、1本だけならまだ対処できます。ヒナはただ1ヶ所の守りを固めればいいだけですから。そうなると、カラスも容易には手を出せません。

とにかく、何本も横枝があるとカラスは次々に枝を移動し、素早く次の攻撃に移れるわけです。ここでヒナの弱点が露わになります。カラスの移動は一瞬ですが、ヒナはゆっくりとしか巣の中で向きを変えられません。突っつきの早さは一人前でも、足元はまだまだ覚束ないのです。よたよたとカラスのほうに向き直っている間にカラスの攻撃を受けて一巻の終わりです。ヒナを巣から引きずり出して地上に落としてしまえば、たとえ親が戻ってこようが為す術がありません。

6月はヒナがすくすくと育って生命力に溢れる季節。しかし、一方では死の気配が濃厚に感じられる季節でもあります。少し前まで4羽もいて賑やかだった巣が、次に見たら2羽、さらにカラスに襲われて1羽と、どんどん減っていきます。そうした巣が全てではないにしろ、ヒナが次々に生まれ、あるところでピークを迎えた後はヒナの数は減る一方。3週目、4週目という齢はアオサギのヒナにとって死と隣り合わせの期間なのです。けれども、ほとんどの巣ではすでにこの期間を過ぎました。ヒナの減少曲線も6月も終わりともなればかなり緩やかになっているはずです。7月、これからヒナがいなくなるとすれば、それはヒナ自らの選択によるもの。巣立ちの季節到来です。


アライグマの襲撃

先日、当サイトの掲示板のほうで、道内のあるコロニーでアオサギがアライグマに襲われているとの情報が寄せられました。その後、お知らせいただいた方と連絡をとり、私も現地に行って確認してきました。行政のほうも一応の対策をとってくれたようです。今回はその一連のできごとの報告です。

掲示板ではコロニーの場所は書かれていませんが、岩見沢市志文にあるコロニーです。私が訪れた時は、見える範囲の20ほどの巣にほぼ全て親がおり、アライグマの影響といってもそれほどではないのかなという印象でした。ただ、考えてみれば、いったんアライグマにやられてもこの時期なら再営巣しますから、被害があった巣を含め、どの巣にも親がいて当然なんですね。空の巣が目につくほどの状況になっていれば、それこそすでに個体群の一部がコロニーを捨てて別の場所に移動しはじめているとも考えられるわけで、そうなればコロニーの崩壊を止めるのはかなり難しくなります。いまのところ、そこまで危険な状態にはなっていないのかなという感じでした。

とはいえ、アライグマの被害が収まっているわけでは全くありません。私がコロニーを観察していて静かだったのは最初のうちだけ。ほどなくアオサギの発するゴーという普段聞かない奇声でコロニーが騒然となりました。これは捕食者を威嚇するための声で、猛禽にコロニーが襲撃された時もこれと同じ声を出します。

さて、コロニー内で異変が起こっている場所を探すと、親鳥たちが威嚇する先に、どっかりと巣に腰を据えたアライグマの姿がありました。襲われている巣は20メートル近い巨木の樹冠近く。周辺の枝の太さは直径10センチあるかないかといったところです。(写真、左からふたつ目の誰もいないように見える巣にアライグマが居座っています。)

この巣でアライグマが何を食べていたかは分かりません。ただ、卵かヒナであるのは確かだと思います。ここには10分かそこら留まっていたでしょうか。やがて、食べ終えると、するすると枝を伝って下りていきました。アライグマが木に登るのは知っていましたが、あそこまで造作なく、まるで地面を歩くかのように木を昇降できるとは思いませんでした。あの様子では、アライグマにいったん目を付けられたら、どんなところに巣をつくろうとアオサギは逃れられないでしょう。

アライグマは幹を途中の二股まで下りると、そこからまた別の枝に上ったり下りたり。そのうち下まで降りていったようでした。が、安堵したのもつかの間、ふたたびアオサギの例の威嚇声が上がったかと思うと、先とは別の巣にまっしぐらに上っていくアライグマの姿がありました。アライグマは巣のそばまで来ても何の躊躇もなく、するすると巣に上がり込んでしまいます。親鳥も何もしないわけではなく、巣に這い上がろうとするアライグマの頭を2度ばかり突つきました。しかし、親鳥ができるのはそれが精一杯。アライグマが親鳥の攻撃で怯むことは全くありませんでした。こちらの巣では、アライグマはしきりに何かを引きちぎるような仕草をしていましたから、おそらくヒナが犠牲になったのだと思います。(写真は、ふたつ目の巣を襲ったアライグマ。ひとつ目の巣のすぐ下にある、親鳥のいた巣です。)

同じ捕食者でも猛禽の場合はアオサギの反撃にもあるていど効果があるように見えます。ところが、アライグマはまるで別次元の大胆さ。親鳥など最初からいないかのように全く無視して好き放題に荒らしていきました。

そもそも、アオサギとアライグマという組み合わせは、本来、自然界ではあり得ません。アライグマはもともと北米で暮らしている動物です。北米にはアオサギはおらず、代わりにオオアオサギが住んでいます。オオアオサギはアオサギを2、3割大きくしたようなものですから、多少はアライグマに抵抗できるのかもしれません。けれども、そのオオアオサギでさえ、時にはアライグマによってコロニーを放棄せざるを得なくなるのです。小柄なアオサギが太刀打ちできないのは無理もありません。

とはいえ、アオサギが襲われるのを手をこまねいて見ているわけにもいきません。先日、アライグマのことを私にお知らせくださった方は、木酢液を営巣木に塗ってこられたそうです。木酢液というのは山火事の臭いがするので、臭覚の敏感なほ乳類はそれを避ける傾向があるのだとか。そんなことで、私もアライグマに襲われるのを目の当たりにした後、同じく木酢液を木に塗布してきました。ただ、効果のほどは…。それほど強烈な刺激臭があるわけではありませんし、何も無い状況でなら避けることはあっても、その先に確実に食料があるという状況でわざわざ回避するとはちょっと思えませんでした。

じつは、この林は道が学術自然保護地区に指定しているということもあり、先日、道のほうにアライグマ対策がとれないかと相談をもちかけたところでした。具体的には、アライグマが営巣木に登れないよう、幹にあるていどの幅をもたせた鉄板を巻いてほしいというものです。その作業がおそらく今日行われたはずです。これは物理的な防御ですから木酢液よりは効果はあるはずです。ただ、メインの営巣木には巻いても全ての営巣木にまではおそらく手が回らないでしょうし、被害が全く無くなると期待するのはまだ早すぎるように思います。アライグマのほうもアオサギに手出しできないとなると、周辺の畑地の農作物に今まで以上に頼ることになるでしょうし。片方を立てれば片方が立たずで、困った状況が無くなるわけではありません。そもそもアオサギがいるからアライグマが寄って来るのだというような話にもなりかねず…。なんだかんだで頭の痛い問題です。


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