アオサギを議論するページ

アオサギ関連新聞記事

アオサギ関連記事

北海道新聞
アオサギ 共存の形
アオサギの親鳥(中央)に向かって、もっと餌がほしいと口を開けるヒナ=2019年5月27日、札幌市北区の篠路五ノ戸の森緑地

「五ノ戸(ごのへ)の森で、アオサギの巣がかなり増えてますよ」。北海道アオサギ研究会の松長克利代表(53)から電話をもらい、5月中旬に札幌市北区の現地へ見に行った。

この「篠路五ノ戸の森緑地」は、札幌市が1998年までに、個人の屋敷林を買い取って整備した公園。近年は、アオサギのコロニー(集団営巣地)が作られている。

午前9時、住宅街に囲まれた公園に着くと、鬱蒼(うっそう)とした木々の奥からにぎやか過ぎる鳴き声が届く。「ギャー」「ゴーッ」「カッカッカッ」。親鳥とヒナの声が交じり合い、生命力に満ちている。動物園と見間違うほどに、濃密な生き物の雰囲気を感じる。

樹上の枝にからむたくさんの巣。ただし、アオサギの親子を観察する際は、ふんの落下に注意しなければならない。散策路の砂利や下草の葉は、見事なくらい真っ白になっている。強烈な鳴き声とふんの害。これが話に聞いていた、アオサギの強烈な「存在感」だろう。

樹上の枝に多数点在するアオサギの巣=2019年5月19日、札幌市北区の篠路五ノ戸の森緑地

公園前の舗装道路にも、白いしみが点在する。自宅玄関のガラスを水洗いしていた80代女性は「もう慣れて諦めてますけど」と前置きしながら、こぼした。「毎年、この時期は、こう。今日みたいな天気の良い日に、布団も干せないんですよ」

マイカーを洗車する30代男性は「会社へ出勤する前に洗うのが朝の日課。木の実が落ちてくると、車がへこむので心配です。自分が小学生の頃は、アオサギはいなかったのに」と苦笑いする。

逆に、アオサギをめでる声も聞いた。近所の自宅から自転車で来た70代男性は、週に1回のペースでこの公園に足を運ぶ。「札幌の街中で、これだけ豊かな自然と野鳥が見られる場所は貴重でしょ。ヒナの成長ぶりを見るのも楽しみだし」

また、30代の男性は3歳の息子に「大きな鳥がいるよー」と声を掛けていた。「公園の前を偶然通り、鳴き声に誘われました。自分たち世代も、子どもたち世代も、自然に触れる機会が減っているので、こうした場所は大切にしてほしい」

わずかな人数の聞き取りだが、地元ではアオサギのすむ環境を大切にしたいと思う一方、生活する上ではアオサギを困った存在とも感じているようだった。

アオサギのふんで白く染まった緑地内の地面や下草=2019年5月19日、札幌市北区の篠路五ノ戸の森緑地

松長代表によると、五ノ戸の森でのアオサギの巣は例年100個弱だった。ところが、今年5月中旬に確認したところ267個と大幅に増加。江別市内のコロニーが昨年、アライグマに襲われたため、大多数のアオサギが江別から引っ越してきたのでは、と推測する。5月下旬、江別の巣はわずか3個に減った。コロニーの完全放棄が避けられない様子だという。

アライグマなどの捕食者から逃れるため、近年、道内各地で営巣地を移しているアオサギ。江別のコロニーが放棄された場合、松長代表は以前から移転先のことを心配していた。アオサギが一層深く人間の生活圏に入り込み、鳴き声やふんの害で苦情が増えると、駆除されかねないからだ。

「ここ五ノ戸の森に移ったアオサギが、今後、江別に戻ることはないだろう」と松長代表は話す。過密によるアオサギ自身への悪影響は心配ないが、隣り合う人間との関係づくりは、今の課題とも。「みんなが納得する共存の形を、相談しながら探していければ、と考えています」

(写真部 西野正史)

アオサギ関連記事一覧へ戻る

ページの先頭に戻る