アオサギを議論するページ

ヒナの大きさ比べ

5月も今日で最後。ここ北海道では、3月半ばからはじまったアオサギの営巣活動は今ようやく折り返し点というところです。札幌近郊のコロニーに限ると、ヒナが生まれたのが早いところで4月下旬でしたから、それからすでに5週間になります。5週間も経つとヒナはもうかなり大きく、姿もずいぶんアオサギらしくなっています。このくらい成長すると、アオサギをあまり見たことのない人なら、親とヒナを区別するのにちょっと戸惑うかもしれません。もちろんヒナと親鳥とは色合いが全く異なるので知っていれば間違うことはありませんが、体型的には親鳥にかなり近づいています。けれども、姿はそれらしくなったとはいえ、彼らが巣立ちするまでにはまだしばらくかかります。このあと2週間ほどでなんとか飛べるようにはなりますが、親鳥に頼らず独り立ちするにはさらにあと2週間ばかり必要です。

size of chicksそんなヒナの成長過程を示したのが右の模式図です。じつは私が野外で観察するときにヒナの齢の判断にいつも苦しむので、親と並んだときにサイズで判断できるようにと、撮り溜めていた写真を参考に自分用に作ったものです。ごく大雑把なものですが一応の参考にはなるかと思います。御覧のように、4週目まではずんぐりしていて明らかにヒナの体型ですし、親と比べればそれなりに小さく、わりと正確に齢を判断することができます。けれども、5週目以降はどうでしょうか。僅かずつ大きくなるていどで体型的にはほとんど変化がありません。じっくり観察すれば風切羽や尾羽の伸長など違いがないわけではありませんが、野外でその違いを判別するのはかなり難しいですね。

結局、サイズを比較するだけでは十分な判断材料にはなりません。そこで、1週目から9週目までのヒナの写真を各週4枚ずつ拾ってみました。野外で何週目のヒナか判断に困ったときに参考にしてみてください。今回はとりあえずPDFで写真だけですが、近いうちに説明を入れて別ページにまとめたいと思います。それまで今しばらくお待ち下さい。

ところで、アオサギのヒナが独り立ちするときはすでに親鳥と同じ大きさまで成長しています。巣立ち直前のヒナの体重は親鳥より若干重いとの研究報告もあるぐらいです。まあ巣立ってしばらくは一人ではろくに餌もとれませんから、その時に備えてできるだけ多くの餌を腹に詰め込んでおくということなのでしょう。そんなわけで、ふつう餌場で見かけるアオサギは成鳥であれ幼鳥であれ大きさはほとんど変わりません。たまに小さくて首の短いのをアオサギの子供だと言う方がいらっしゃいます。たしかにそんな感じではあります。けれども、あれはゴイサギですから。


サギ類の大きさ比べ

アオサギに近縁のサギたちを大きさ順に並べてみました。こうして見ると、アオサギはちょうど真ん中あたりになりますね。アオサギを普段一番見慣れているせいか、このArdea属14種の中では、アオサギが、姿形、大きさの面でもっとも基本形に近いように思います。他はアオサギを原形として大きくなったり小さくなったり、黒くなったり白くなったりといった感じです。いや、実際はこの14種のどれでもないプロトタイプのサギが先祖にいて、そこから様々に分岐したのでしょうけど、そのプロトタイプにもっとも近いのはやっぱりアオサギのような気がします。

この図を見て、コサギがいないと思う人がいるかもしれません。あるいはカラシラサギが抜けてるとか。それらの種はArdea属ではなく近縁のEgretta属にいるのですね。それならチュウサギやダイサギもEgretta属だろうと言われるかもしれませんが、チュウサギやダイサギは最近になってEgretta属からArdea属に越してきたのです。しかも、ダイサギに至っては、それまで亜種扱いだったチュウダイサギとオオダイサギが別々の種となってめでたく参入しました。ついでになぜかアマサギまでBubulcus属から仲間入りしています。アマサギが入るのだったら、コサギやカラシラサギのほうが先に入りそうなものですが、その辺は外見だけでは分からない分類学上の深い理由があるのでしょう。

【2020年4月18日追記 : この後、分類が変わり、現在は、コサギとチュウサギはEgretta属に、アマサギはBubulcus属に引っ越しています。また、チュウダイサギとオオダイサギは再び一緒になってただのダイサギに戻りました。いずれも元の鞘に収まったという感じですね。どうもシラサギ類の分類というのは何かと難しいようで、昔からあっちに行ったりこっちに来たりとなかなか落ち着いてくれません。もっとも、今回の最新分類は末永く決定版となりそうな予感はしますが…。そんなことで、Ardea属は現在11種となっています。】

ところで、上に描いたサギの絵は、当サイトの『サギたちのプロフィール』にあるものと一緒です。ただ、同ページではすべてのサギを同じ縮尺で載せているので、今回はそれぞれの大きさの違いが分かるように大きさ順に並んでもらったわけです。ところが、この背比べにはひとつ問題があるのですね。鳥の大きさというのは、人間の背丈を測るようには測れません。地面から頭のてっぺんまでの高さを測ろうにも、とくにサギなどの場合は、首の伸ばし加減や胴体の傾け具合で様々に変わりますから。なので、一般には首を伸ばした状態で嘴の先端から尾羽の先端までを測り、それを全長として表記しています。じつは、上の絵は、全長の違いを絵にしたもので、実際の大きさの違いを正確には反映していません。ただ、首のやや短いアマサギとチュウサギを除けば、あとのサギたちはほとんど似たようなフォルムですから、全長の違いを体高の違いとみなしても、目安ていどに見る分には差し支えないと思います。

さてさて、今日はクリスマスイブ。そんな日にわざわざ当サイトを訪れ、しかもこんな記事を最後まで読んでいただいた物好きな方へ、今回はささやかなクリスマスプレゼントを用意しました。サギのイラストの入った来年のカレンダーです。プレゼントといっても、ご自分で印刷して切り取らなくてはなりませんけど。それでも構わない、サギさえいれば、というサギ好きな方は以下のPDFファイルをダウンロードしてみてください。A4の少し厚めの紙に印刷し、ひと月分ずつ切り取って卓上カレンダーにするのがいいと思います。(追記:作られた方からさっそくお写真が届きました。一枚一枚切り離さず、こんなふうに三角形にして置くのもいいですね。)

     カレンダー(日本語版)   カレンダー(英語版)

本当はArdea属の全14種に登場してもらいたかったのですが、なにぶん一年が12ヶ月しかないもので、全てを載せることはできません。そこで、最近になってArdea属に加わったアマサギとチュウサギの2種には泣く泣くご遠慮いただきました。彼らにはまた別の機会での活躍を期待したいと思います。

ここ札幌はホワイトクリスマスの夜を迎えようとしています。ちらちらと雪が舞っています。いよいよ年の瀬ですね。今年も一年ありがとうございました。良いお年をお迎えください。


白いアオサギ

イギリスにある王立鳥類保護協会のコミュニティページに白いアオサギが紹介されていました。

以前、当サイトの掲示板でアルビノのアオサギが話題になったことがあります。右の写真のアオサギはそのとき紹介されたのと同じ個体です。このアオサギと今回紹介したアオサギ、何が違うか分かるでしょうか? よく比べてみると、右のアオサギは目が赤っぽいのに対してイギリスのアオサギは通常の黒い目をしています。また、くちばしの色も違いますね。写真のアオサギのくちばしは完全に黄色です。これに対して、イギリスのアオサギは黒と黄色で、通常の幼鳥(この個体はどうも幼鳥のようです)と変わりない色です。つまり、羽が白いこと以外は全く普通のアオサギなのです。

じつはイギリスのアオサギはアルビノではないのですね。では何者なのかというと、いわゆる白変種と呼ばれる個体です(白変種と言っても種は同じです)。アルビノはメラニン色素が全く無いかあるいはごく少量しか作れないために体全体が白くなります。これは遺伝学上の疾患です。一方、白変種の場合は色素は普通に作れますし遺伝的にも正常です。これは人間で同様のケースが無いので想像しにくいのですが、たとえば血液型にA型があったりB型があったりするのと同じようなものだと思います。ただ、白変種の場合は血液型の例とは異なり見かけが全く違いますし出現頻度が極端に少ないので余計に目立つわけです。ここで出現頻度が少ないというのは重要で、もしこれが種の中で一定以上の割合で普通に存在するようだと、単に二型があるとみなされるのでしょうね。たとえば、サギでいうとクロサギに黒色型と白色型があるようなものです。じつは、アメリカのオオアオサギ(Great Blue Heron)にもフロリダのほうに白色型がいてGreat White Heronと呼ばれていたりします。そう考えると、たまにこんな真っ白なアオサギがいてもびっくりするほど不思議ではないのかもしれませんね。


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