アオサギを議論するページ

サギ類の大きさ比べ

アオサギに近縁のサギたちを大きさ順に並べてみました。こうして見ると、アオサギはちょうど真ん中あたりになりますね。アオサギを普段一番見慣れているせいか、このArdea属14種の中では、アオサギが、姿形、大きさの面でもっとも基本形に近いように思います。他はアオサギを原形として大きくなったり小さくなったり、黒くなったり白くなったりといった感じです。いや、実際はこの14種のどれでもないプロトタイプのサギが先祖にいて、そこから様々に分岐したのでしょうけど、そのプロトタイプにもっとも近いのはやっぱりアオサギのような気がします。

この図を見て、コサギがいないと思う人がいるかもしれません。あるいはカラシラサギが抜けてるとか。それらの種はArdea属ではなく近縁のEgretta属にいるのですね。それならチュウサギやダイサギもEgretta属だろうと言われるかもしれませんが、チュウサギやダイサギは最近になってEgretta属からArdea属に越してきたのです。しかも、ダイサギに至っては、それまで亜種扱いだったチュウダイサギとオオダイサギが別々の種となってめでたく参入しました。ついでになぜかアマサギまでBubulcus属から仲間入りしています。アマサギが入るのだったら、コサギやカラシラサギのほうが先に入りそうなものですが、その辺は外見だけでは分からない分類学上の深い理由があるのでしょう。

【2020年4月18日追記 : この後、分類が変わり、現在は、コサギとチュウサギはEgretta属に、アマサギはBubulcus属に引っ越しています。また、チュウダイサギとオオダイサギは再び一緒になってただのダイサギに戻りました。いずれも元の鞘に収まったという感じですね。どうもシラサギ類の分類というのは何かと難しいようで、昔からあっちに行ったりこっちに来たりとなかなか落ち着いてくれません。もっとも、今回の最新分類は末永く決定版となりそうな予感はしますが…。そんなことで、Ardea属は現在11種となっています。】

ところで、上に描いたサギの絵は、当サイトの『サギたちのプロフィール』にあるものと一緒です。ただ、同ページではすべてのサギを同じ縮尺で載せているので、今回はそれぞれの大きさの違いが分かるように大きさ順に並んでもらったわけです。ところが、この背比べにはひとつ問題があるのですね。鳥の大きさというのは、人間の背丈を測るようには測れません。地面から頭のてっぺんまでの高さを測ろうにも、とくにサギなどの場合は、首の伸ばし加減や胴体の傾け具合で様々に変わりますから。なので、一般には首を伸ばした状態で嘴の先端から尾羽の先端までを測り、それを全長として表記しています。じつは、上の絵は、全長の違いを絵にしたもので、実際の大きさの違いを正確には反映していません。ただ、首のやや短いアマサギとチュウサギを除けば、あとのサギたちはほとんど似たようなフォルムですから、全長の違いを体高の違いとみなしても、目安ていどに見る分には差し支えないと思います。

さてさて、今日はクリスマスイブ。そんな日にわざわざ当サイトを訪れ、しかもこんな記事を最後まで読んでいただいた物好きな方へ、今回はささやかなクリスマスプレゼントを用意しました。サギのイラストの入った来年のカレンダーです。プレゼントといっても、ご自分で印刷して切り取らなくてはなりませんけど。それでも構わない、サギさえいれば、というサギ好きな方は以下のPDFファイルをダウンロードしてみてください。A4の少し厚めの紙に印刷し、ひと月分ずつ切り取って卓上カレンダーにするのがいいと思います。(追記:作られた方からさっそくお写真が届きました。一枚一枚切り離さず、こんなふうに三角形にして置くのもいいですね。)

     カレンダー(日本語版)   カレンダー(英語版)

本当はArdea属の全14種に登場してもらいたかったのですが、なにぶん一年が12ヶ月しかないもので、全てを載せることはできません。そこで、最近になってArdea属に加わったアマサギとチュウサギの2種には泣く泣くご遠慮いただきました。彼らにはまた別の機会での活躍を期待したいと思います。

ここ札幌はホワイトクリスマスの夜を迎えようとしています。ちらちらと雪が舞っています。いよいよ年の瀬ですね。今年も一年ありがとうございました。良いお年をお迎えください。

白いアオサギ

イギリスにある王立鳥類保護協会のコミュニティページに白いアオサギが紹介されていました。

以前、当サイトの掲示板でアルビノのアオサギが話題になったことがあります。右の写真のアオサギはそのとき紹介されたのと同じ個体です。このアオサギと今回紹介したアオサギ、何が違うか分かるでしょうか? よく比べてみると、右のアオサギは目が赤っぽいのに対してイギリスのアオサギは通常の黒い目をしています。また、くちばしの色も違いますね。写真のアオサギのくちばしは完全に黄色です。これに対して、イギリスのアオサギは黒と黄色で、通常の幼鳥(この個体はどうも幼鳥のようです)と変わりない色です。つまり、羽が白いこと以外は全く普通のアオサギなのです。

じつはイギリスのアオサギはアルビノではないのですね。では何者なのかというと、いわゆる白変種と呼ばれる個体です(白変種と言っても種は同じです)。アルビノはメラニン色素が全く無いかあるいはごく少量しか作れないために体全体が白くなります。これは遺伝学上の疾患です。一方、白変種の場合は色素は普通に作れますし遺伝的にも正常です。これは人間で同様のケースが無いので想像しにくいのですが、たとえば血液型にA型があったりB型があったりするのと同じようなものだと思います。ただ、白変種の場合は血液型の例とは異なり見かけが全く違いますし出現頻度が極端に少ないので余計に目立つわけです。ここで出現頻度が少ないというのは重要で、もしこれが種の中で一定以上の割合で普通に存在するようだと、単に二型があるとみなされるのでしょうね。たとえば、サギでいうとクロサギに黒色型と白色型があるようなものです。じつは、アメリカのオオアオサギ(Great Blue Heron)にもフロリダのほうに白色型がいてGreat White Heronと呼ばれていたりします。そう考えると、たまにこんな真っ白なアオサギがいてもびっくりするほど不思議ではないのかもしれませんね。

婚姻色

アオサギの婚姻色はこの時期に特有のものです。遠目にはそれほど違いがあるように見えませんが、実際はかなりの色変化があります。この婚姻色、あまりに鮮やかなので、とくに目からくちばしの辺りだけ見ると熱帯の鳥でないかと思うほどです。そんなアオサギですから、飛来当初は彩度の低い雪景色の中でいかにも場違いな感じになりそうです。しかし、意外なことに、白い雪をバックにした婚姻色のアオサギはことのほか美しいのです。もしこれが、体全体が派手なのであればそうは見えないと思います。全体としてシックな色調で抑えられているからこそ、婚姻色もアクセントになって映えるのでしょうし、雪の背景でも自然な感じで馴染むのでしょう。

婚姻色で色が変わるのは、目、目元、くちばし、脚、つまり羽毛で覆われず露出しているところ全てです。このうち、目、くちばし、脚は黄色から朱色に変わります。この色はべたっとした色ではなく、たとえば、くちばしは根元のほうの朱色から先端のほうの黄色へとグラデーションがかかっています。より正確な色表現で言えば、牡丹色から梔子(くちなし)色といったところです。また、目元の色は黄色から青紫色に変わります。これも青藤色というのがより正確かもしれません。

この婚姻色はつがいが形成される時期がもっとも鮮やかです。ただ、全ての部位が同じように発色するわけではないのですね。とくに目というか光彩の部分については赤くなるのはごく限られた時だけのようです。他の部分が婚姻色に変わっているときも目だけは普通に黄色かったりします。じつはこの辺の詳しいことはまだ十分研究されてなくて私もよく分かりません。分からないのですが、気持ちや感情がとくに高ぶっている時に赤くなる、これは確かだと思います。

写真はご覧の通り、右が平常時の黄色い目で、左が尋常ならざるときの真っ赤な目です。赤い目のほうは何かただ事ではない雰囲気がびしびしと伝わってきますね。

目の不思議

鳥の目というのは知れば知るほど不思議です。遠くのものと近くのものに同時に焦点を合わせられたり、人には見えない紫外の色が見えていたり、とても人間が太刀打ちできるような代物ではありません(参考:「アオサギの目」2006年2月21日)。調べれば、他にもまだまだ知られざる能力が隠されていそうです。そんな鳥の目ですが、今回はそういった外見で分からない不思議でなく、目に見える不思議を書いてみたいと思います。

普段、アオサギは目つきが悪いと思っていた方は、右の写真をご覧になればちょっと意外な感じがするのではないでしょうか? あれ、こんな大きな目をしていたかな、と。これは巣立ち前のヒナですが、この場合、ヒナか成鳥かというのは関係ありません。ともかく、ずいぶんつぶらな瞳です。人によってはこのように斜め後ろの角度から見るアオサギが一番好きだという方もいらっしゃるようですね。たしかにこんなアオサギを見てしまうとますますファンが増えそうです。

ところが、じつはこれトリックだったのです。左の写真は同じアオサギが少しこちら向き加減になったところ。黒い瞳孔はずいぶん小さくお馴染みのアオサギの目になっています。これが本来の見え方です。先ほどのアングルでは、瞳孔の色が中で屈折して角膜いっぱいに映るため、あのようなつぶらな瞳に見えたのですね。

ただ、瞳孔の大きさについて言うと、アオサギの虹彩は猫の目ほどではないにしろかなり大きく伸縮します。周りが明るければ左の写真のようなアオサギらしい?目になりますが、暗いところではそうとう大きく見開かれます。普段、明るい環境下であの爬虫類っぽい目しか見たことがなければ、薄暮時のアオサギに是非会ってみてください。それまで抱いていたアオサギのイメージがずいぶん変わると思いますよ。

目のことでついでにもうひとつ。右の写真、どことなくへんちくりんな感じがしませんか? でもどこが変なのでしょう? これも先ほどと同じく巣立ち前のヒナです。ヒナなので頭の羽毛が乱れているのは仕方ありません。真っ正面を向いているので素っ頓狂な顔つきに見えますが、これもアオサギ生来のもの。それでもおかしいのは、左右の目で瞳孔の大きさが異なっているからです。写真を注意深くご覧になれば分かるかと思いますが、これじつは左側から日が照っていて右側は陰になっているんですね。明るいほうの瞳孔は収縮し、暗いほうの瞳孔は開いているわけです。

これって当たり前のことなのでしょうか? 気になったので人間でもそうなるのかなと調べてみました。自分の顔の真ん中に衝立を立て、左右の明るさを変え、瞳孔の大きさを鏡で見比べてみたわけです。で、あまり違うようには見えません。私の目がおかしいのでしょうか? まあ、サギの目と同じと考えること自体、間違っているような気もしますが。考えてみれば、人間の目は正面についていて両目はいつもだいたい同じものを見ているわけですから、片方が明るくて片方が暗いという状況はほとんど無いのかもしれません。進化の過程で、目が側面から正面に移動してくるにつれ、左右の目を別々に調節する機能は必要がなくて退化してしまったのでしょうね。と、これは飽くまで私の適当な思いつきです。いずれにしても、人間の目は鳥には到底敵わなそうです。

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