アオサギを議論するページ

オオアオサギを巡る人々

前回、ここでオオアオサギのことを書きました。今回はそのつづきです。いつもアオサギに限って話題にしている当サイトですが、アオサギにそっくりなオオアオサギだけは他人事と思えずついつい話題にしてしまいます。アオサギのことしか眼中に無いという奇特な方もいらっしゃるかと思いますが、どうかご了承ください。

さて、今回話題にするオオアオサギは太平洋岸に分布する亜種のPacific Great Blue Heronです。前回書いたのと同じ亜種ですね。ただ、今回はオオアオサギそのものの話ではなく、オオアオサギに関心を寄せる人々のことを書いてみようと思います。どうも、彼らはオオアオサギに対して並々ならぬ思い入れを持っているようなのです。

当亜種の生息地であるバンクーバーやシアトル周辺には、オオアオサギの保護活動を精力的に行っているNPO等のグループがいくつもあります。そして、これらの団体のいくつかは、いわゆる自然や野生動植物一般を対象としてではなく、とくにオオアオサギを対象に活動しているのが特徴です。たとえば、シアトル近郊、レントンのコロニーを活動拠点にしているHerons Forever。この団体でびっくりするのは会員が600名もいること。さすがにそれだけ大所帯だと活動の規模も大きく、800万ドルもの資金を集めた上、コロニーとその周辺の土地、約24ヘクタールを丸ごと購入しています。こんなにしてもらったらオオアオサギも簡単にはコロニーを引き払えませんね。

それほど規模が大きくなくても同じような団体はあちこちにあります。たとえば、Heron Habitat Helpersというグループ。この団体はシアトル(そういえば、シアトルの市の鳥はオオアオサギです)の街中のコロニーを中心に幅広く活動している市民団体ですが、その活動の一環としてHeronCamを用いた面白い企画をやっています。HeronCamというのはHeron(サギ)のCam(カメラ)。つまり、巣の近くにあらかじめ設置しておいたビデオカメラでサギたちの子育ての様子を撮影するというものです。撮影された映像はネット上に生で流されており、常時、誰でも見ることができます。調べてみると、HeronCamはここ以外にも様々なグループや研究機関があちこちに設置しているようです。これは日本のアオサギコロニーでもぜひやってみたいものですね。今は繁殖期が終わってどのカメラも可動していないのが残念ですが、来春には再び動き始めるはずです。HeronCamで検索すればたぶんいくつも引っかかると思いますので興味のある方は探してみてください。

カナダのほうに行くと、チリワックというところにGreat Blue Heron Nature Reserveというそのままオオアオサギの名を冠したサンクチュアリがあります。写真を見るととてもきれいで穏やかな場所のようですね。ただし、ハクトウワシが来なければの話ですが。このサンクチュアリで興味深いのは”Adopt A Heron Nest”という企画です。何と訳せば良いのでしょうか、要は100ドル(追記:その後、料金は改定)払ってコロニーの中で自分が支援したい巣を決めるということのようです。もっとも、そうしたからといってその巣のオオアオサギが何か恩返しをしてくれるわけでもありませんし何も起こりません。ただ、単純に寄付をお願いしますというのよりはかなり気の利いたやり方かなと思います。いろいろ調べてみると、これはここだけの専売特許ではなく他でもやっているようです。Stanley Park Ecology Societyという団体がバンクーバーで行っている同様の企画では、料金は40ドルとさっきのところよりずっとリーズナブル。その上、自分が選んだ巣の子育ての状況をemailで連絡してくれたり、コロニーについての報告書ももらえたり、コロニーの現地観察会に参加できたりと内容も盛りだくさんでお得です。

これらの地域では他にも多種多様な団体があって様々な活動をしています。民間だけでなく大学や国や州の研究機関も多様なプロジェクトを組み、それらがシステマティックに統合されて、オオアオサギただ一種のためだけに巨大な支援ネットワークができています。それらについても紹介できればと思いますが、長くなるので今回はとりあえずここまで。ともかく、オオアオサギの身辺が何かと騒がしい状況にあって、彼らを巡る人の動きはますます活発になっているようです。

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