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アライグマ騒動

アライグマ騒動

2012/05/20(Sun) 02:20      アルト      昨日の出来事です

昨日 空知のコロニーでアライグマを目撃しました。

5月に入り、アオサギの数が減っていると思っていて、もしやこちらのサイトに記載されている、アライグマの襲撃を受けているのかと心配していた矢先です。
昨日コロニーを見に行くと、アオサギたちが大騒ぎしだしたと思ったら、アライグマと思われるものがが木を登り、巣の一つに入り込んでいきました。親は脇から威嚇していましたが、アライグマは全く意に介していないようでそのまま居座っていました。 親鳥の威嚇は15分以上続いていました、木の上での出来事で巣の中の詳細は見えませんでしたが、親鳥の必死の様子と原因が外来種のアライグマらしいという状況を目撃して、とても切なくなりました。私のような一般市民にでもできることは何かあるのでしょうか。

不明瞭ですが、アライグマの体の一部が見て取れるかと思いますので写真を添付させていただきます。


2012/05/20(Sun) 06:00      まつ@管理人      Re: 昨日の出来事です

これはショッキングな写真ですね。道内でもこういうことはあるだろうとは思っていましたが、アライグマは専ら夜行性と聞いていたので、白昼堂々とこんなことをしているとは思いませんでした。

アライグマはアオサギにとって間違いなく厄介な存在です。道内で言えば、1997年に放棄された野幌コロニーはアライグマが犯人ではないかと疑われています。アライグマは道内全域に分布域を広げつつありますから、他にも影響を受けているコロニーはあると思います。ただ、野幌にしても、営巣木に爪痕が見つかったというていどで、アライグマが実際に襲っているのを見た人は誰もいなかったんですね。そんなことで、添付された写真は証拠写真としてもとても貴重なものだと思います。

ともかく、これは放っておけば野幌の二の舞になりかねません。すでにアオサギが減っているということであれば、コロニー全体が放棄されるのは時間の問題だと思います。二百数十ものペアが子育てしていた野幌でも無くなったくらいですから、規模の小さなコロニーであれば今年中に皆いなくなっても不思議ではありません。

自然の中で起きていることだから放っておけばいいという意見もあろうかと思いますが、アライグマが外来種ということを置くにしても、アオサギはわずかに残された樹林でかろうじて営巣できているような状態です。現在の場所を追い出されればその先まともな営巣環境が見つかるという保証はありません。いったんコロニーが放棄されると、個体群は複数の小さなグループに分かれてしまい、その上、人とのトラブルが発生しやすい場所に新たにコロニーがつくられるなど、アオサギにとっても人にとっても不幸な結果になることがほとんどです。ですから、もし現在の場所がアオサギと人との間にとくに問題が無い場所なら、できる限りアオサギにそこに留まってもらえるような策を講じるのが賢明です。

さて、問題はアライグマの襲撃をどのように防ぐかということですね。方法としてはアライグマが物理的に木に上れないようにするのが一番手っ取り早いと思います。右の写真は野幌でアライグマ対策として営巣木に巻かれた金属板です。材質についてはアライグマの爪がひかからないツルツルのものであればトタン板でも何でも構いません。もし、コロニーのある樹林の所有者に賛同してもらえるのならこの方法が一番かなと思います。人がコロニーに入って作業することでアオサギの繁殖への影響は避けられませんが、コロニーが壊滅することを思えばやむを得ません。カラスが多い場所で、人による攪乱でカラスの捕食がありそうな場合は、カラスがねぐらに去った後に作業すると良いと思います。

私としては、今回のケースは人の生活に直接関わってくることでもありますし、アオサギの保護保全の機運を高めるためにも、道新などのメディアに取り上げてもらったほうがいいかと思います。

たまたま数日前、アメリカのミネソタ州でオオアオサギのコロニーがアライグマの被害から回復しつつあるという新聞記事(CBS Minesota 2012年5月15日付け)がありました。もともとは千巣を超える規模だったコロニーがほとんど壊滅状態にまで追いやられ、その後、木に鉄板を巻いた結果、現在百数十巣にまで回復してきているという話です。

人が手助けすれば、今なら何とかなる可能性はあると思います。


2012/05/31(Thu) 19:42      まつ@管理人      アライグマの襲撃

その後、お知らせいただいた方と連絡をとり、私も現地に行って確認してきました。行政のほうも一応の対策をとってくれたようです。今回はその一連のできごとの報告です。

現場は岩見沢市志文にあるコロニーです。私が訪れた時は、見える範囲の20ほどの巣にほぼ全て親がおり、アライグマの影響といってもそれほどではないのかなという印象でした。ただ、考えてみれば、いったんアライグマにやられてもこの時期なら再営巣しますから、被害があった巣を含め、どの巣にも親がいて当然なんですね。空の巣が目につくほどの状況になっていれば、それこそすでに個体群の一部がコロニーを捨てて別の場所に移動しはじめているとも考えられるわけで、そうなればコロニーの崩壊を止めるのはかなり難しくなります。いまのところ、そこまで危険な状態にはなっていないのかなという感じでした。

とはいえ、アライグマの被害が収まっているわけでは全くありません。私がコロニーを観察していて静かだったのは最初のうちだけ。ほどなくアオサギの発するゴーという普段聞かない奇声でコロニーが騒然となりました。これは捕食者を威嚇するための声で、猛禽にコロニーが襲撃された時もこれと同じ声を出します。

さて、コロニー内で異変が起こっている場所を探すと、親鳥たちが威嚇する先に、どっかりと巣に腰を据えたアライグマの姿がありました。襲われている巣は20メートル近い巨木の樹冠近く。周辺の枝の太さは直径10センチあるかないかといったところです。(右の写真、左からふたつ目の誰もいないように見える巣にアライグマが居座っています。)

この巣でアライグマが何を食べていたかは分かりません。ただ、卵かヒナであるのは確かだと思います。ここには10分かそこら留まっていたでしょうか。やがて、食べ終えると、するすると枝を伝って下りていきました。アライグマが木に登るのは知っていましたが、あそこまで造作なく、まるで地面を歩くかのように木を昇降できるとは思いませんでした。あの様子では、アライグマにいったん目を付けられたら、どんなところに巣をつくろうとアオサギは逃れられないでしょう。

アライグマは幹を途中の二股まで下りると、そこからまた別の枝に上ったり下りたり。そのうち下まで降りていったようでした。が、安堵したのもつかの間、ふたたびアオサギの例の威嚇声が上がったかと思うと、先とは別の巣にまっしぐらに上っていくアライグマの姿がありました。アライグマは巣のそばまで来ても何の躊躇もなく、するすると巣に上がり込んでしまいます。親鳥も何もしないわけではなく、巣に這い上がろうとするアライグマの頭を2度ばかり突つきました。しかし、親鳥ができるのはそれが精一杯。アライグマが親鳥の攻撃で怯むことは全くありませんでした。こちらの巣では、アライグマはしきりに何かを引きちぎるような仕草をしていましたから、おそらくヒナが犠牲になったのだと思います。(左の写真は、ふたつ目の巣を襲ったアライグマ。ひとつ目の巣のすぐ下にある、親鳥のいた巣です。)

同じ捕食者でも猛禽の場合はアオサギの反撃にもあるていど効果があるように見えます。ところが、アライグマはまるで別次元の大胆さ。親鳥など最初からいないかのように全く無視して好き放題に荒らしていきました。

そもそも、アオサギとアライグマという組み合わせは、本来、自然界ではあり得ません。アライグマはもともと北米で暮らしている動物です。北米にはアオサギはおらず、代わりにオオアオサギが住んでいます。オオアオサギはアオサギを2、3割大きくしたようなものですから、多少はアライグマに抵抗できるのかもしれません。けれども、そのオオアオサギでさえ、時にはアライグマによってコロニーを放棄せざるを得なくなるのです。小柄なアオサギが太刀打ちできないのは無理もありません。

とはいえ、アオサギが襲われるのを手をこまねいて見ているわけにもいきません。先日、アライグマのことを私にお知らせくださった方は、木酢液を営巣木に塗ってこられたそうです。木酢液というのは山火事の臭いがするので、臭覚の敏感なほ乳類はそれを避ける傾向があるのだとか。そんなことで、私もアライグマに襲われるのを目の当たりにした後、同じく木酢液を木に塗布してきました。ただ、効果のほどは…。それほど強烈な刺激臭があるわけではありませんし、何も無い状況でなら避けることはあっても、その先に確実に食料があるという状況でわざわざ回避するとはちょっと思えませんでした。

じつは、この林は道が学術自然保護地区に指定しているということもあり、先日、道のほうにアライグマ対策がとれないかと相談をもちかけたところでした。具体的には、アライグマが営巣木に登れないよう、幹にあるていどの幅をもたせた鉄板を巻いてほしいというものです。その作業がおそらく今日行われたはずです。これは物理的な防御ですから木酢液よりは効果はあるはずです。ただ、メインの営巣木には巻いても全ての営巣木にまではおそらく手が回らないでしょうし、被害が全く無くなると期待するのはまだ早すぎるように思います。アライグマのほうもアオサギに手出しできないとなると、周辺の畑地の農作物に今まで以上に頼ることになるでしょうし。片方を立てれば片方が立たずで、困った状況が無くなるわけではありません。そもそもアオサギがいるからアライグマが寄って来るのだというような話にもなりかねず…。なんだかんだで頭の痛い問題です。

2004/04/17(Sat) 01:57      まつ@管理人      アライグマのこと

先日、アライグマの話を聞く機会がありました。北海道では農業被害が頻発しあまり良い印象はもたれていないアライグマですが、道内での野生化はというと、1979年、恵庭でペット10頭が逃げたのがそもそもの始まりなのだそうです(少なくとも札幌近辺ではということですが)。その後、野幌のアオサギコロニーが襲われ消滅した事件(ただしこれは状況証拠のみ)がありアライグマ問題は一挙に表面化しました。それが1997年ですから、その間約20年、アライグマは地道に勢力を拡大していたわけですね。

現在、北海道ではアライグマの絶滅を目標に、全道で年に1,000頭もの捕獲を行っているそうです。しかし、これでもまだ足りないといいます。また、もしここで捕獲を止めてしまえば、森からあふれたアライグマが街中に出るのは時間の問題なのだとか。野幌の森を逃れたアオサギはいま街中の林に落ち着いていますから、もしアライグマが町に出てくるようになれば一大事です。アオサギにとってはアライグマは一刻も早くいなくなって欲しいはず。しかし、一方のアライグマにしてみれば、何の因果でここまで迫害されなければならないのか、という気持ちでしょう。

人間の身勝手さは覆い隠すべくもありませんが、もしそれをいくらかでも償いたいなら、毎年こんなにも多くのアライグマが殺され続けているという現実をもっと重要視する必要があるのではないでしょうか。同じ過ちを二度と繰り返さないためにも。

2002/05/19(Sun) 11:58      まつ@管理人      営巣場所の異変

このところ、札幌近郊でおかしな場所につくられるコロニーが増えています。
平岡、篠路は住宅地、江別は工業団地。このような環境にコロニーがつくられた例は、北海道ではこれまでほとんどありませんでした。また、夕張のように民家のすぐ裏につくられたアオサギの巣や、幌向ダムのようにブイの上に営巣するようになったケースもあります。そして、先日観察したコロニーも尋常ではありませんでした。このコロニーは幌向ダムから10kmばかり離れた池のほとりにあるのですが、巣の造られている場所が水際ぎりぎりのヤナギ林で、水際というよりほとんどマングローブ林のように根元が水没している状態です。巣はヤナギの2m前後のところに造られており、いくつかの巣はほとんど水面の高さにあります。確かに世界中探せばこのような営巣スタイルも希ではないのかもしれません。けれども、このコロニーを見て奇妙に思うのは、なにもそんなところに巣を架けなくても他につくれる場所がいくらでもあるはずだからです。このコロニーの場合、周りは山で囲まれており手頃な斜面に針広混交林が広がっています。営巣しようと思えばそのスペースは半ば無尽蔵にあるのです。ところで、こうした状況はこのコロニー特有のものではなく、多かれ少なかれ前述した全てのコロニーに当てはまるものです。「巣をつくる場所が他にないわけではないのに、何でわざわざそんなところに?」という疑問をどのコロニーを見ても感じるのです。
そもそも、こんなことが起こり始めたのは野幌にあった大規模コロニーが消滅した頃からでした。当時は消滅の理由がいろいろ取りざたされてきましたが、「アライグマ」というのもかなり有力な候補として挙がっていました。けれども、その理由というのは営巣木に爪跡が残っていた程度のものだったので、アオサギがいなくなった責任を全てアライグマに押しつけるのにはいささか抵抗がありました。しかし、今回ここに書いた一連の状況をアライグマと関連させて見てゆくと、どれもあまりに上手く説明がつくのです。いずれにせよ状況証拠の域は出ないものの、アライグマ犯人説はますます有力になったのではないかと思います。
例えば、平岡、篠路、江別のコロニーは、敢えて周囲と隔離された林を選ぶことでアライグマの侵入を防いでいると見ることができます。幌向ダムや今回紹介したヤナギ林のコロニーは、水を防御壁として用いているようです。アライグマは泳ぐこともできるということですが、地上に営巣して木を登ってこられるよりは安全なのでしょう。夕張のコロニーは、川の対岸にあったものが集落のある方へ移ってきたものですが、その当時、対岸の山ではよくアライグマが目撃されたのに対し、こちら側ではまだ見かけたことがないということです。さらに、このコロニーではいくつものペアが犬小屋のすぐそばに巣を造っています。もしかすると、アオサギがその犬を番犬にしているのではないでしょうか。個人的にはアオサギはそのくらいの知恵は十分もっていると思うのです。

アライグマの分布域は札幌周辺だけでなく全道に広がりつつあると聞きます。そして、こうしている間にもその勢力範囲を着々と広げているはずです。もし、今回の話が本当であるとするなら、営巣状況の異変はまだ始まったばかりで、将来さらに大規模かつ広域的に影響が及ぶことが懸念されます。
今回の話が私の誇大妄想であれば良いのですが…。

2001/08/27(Mon) 20:57      まつ@管理人      アライグマ騒動

1996年から翌年にかけ、札幌で目にする新聞はアオサギの記事をいつになく頻繁に載せました。札幌で古くから親しまれてきた野幌のコロニーが消滅したのです。アオサギが住めなくなった理由はいろいろと憶測されましたが、決定的な原因の一つはアライグマではないかと考えられています。もともとアライグマは北アメリカに住む動物です。そこではアライグマはオオアオサギを襲うことがあるようです。一回り小さなアオサギならオオアオサギよりずっと容易に襲えるでしょう。
アライグマの生息域はどんどん拡大しているそうです。他のコロニーが被害を受けるのも時間の問題かもしれません。ところで、「どこに巣をつくるか」でブイの上にできたコロニーのことを書きました。実はこのコロニー、以前は今の場所から100mばかり離れた山の斜面にありました。そこから移ってきたのですが、何が理由だったのでしょう。ダムの管理人さんが「最近ここでアライグマを見たよ」と言っていたのがなんとも不安です。
かつて野幌は二百数十ものアオサギのつがいで賑わいました。いまそのコロニーは、何十という崩れかけの巣だけが残され、さながらゴーストタウンのようです。アオサギのように集団で繁殖する鳥は、いるときも目立ちますがいなくなった時もすぐ分かってしまいます。これは考えようによってはまだ恵まれているのかもしれません。それまでいなかったただ一種の移入種のせいで、もっと人目に付きにくい生物が人知れず姿を消している可能性は大いにあると思うのです。

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