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営巣木

営巣木

2004/10/12(Tue) 01:13      まつ@管理人      木の好み

これまでに採ったデータから、北海道でアオサギが利用している営巣木についてまとめてみました。
全てのコロニーを合計すると営巣木の本数は4000本以上、樹種は40種に達しました。面白いのは、このうちカラマツの占める割合が約4割にもなることです。これにドイツトウヒ、トドマツといった他の針葉樹も合わせると、その割合は6割を超えます。このデータだけから見ると、北海道のアオサギはどうやら針葉樹がお気に入りのようです。
ただ、カラマツにしてもドイツトウヒにしても、北海道にもともと自生していた木ではなく、人が持ち込んで植林したものです。もし、それらの木が入ってこなかったら、北海道のアオサギは果たして今ほど増えていただろうか、とふと思いました。


2004/11/08(Mon) 18:00      しらい@アオサギネット      Re: 木の好み

営巣木は、興味があり私も調べたことがあります。関東では針葉樹を選択的に選んでいるという様子はなく、ヤマザクラやコナラなどの落葉広葉樹であったり、スダジイやシロダモの林に営巣するところもありました。多摩動物公園繁殖地のヤマザクラには複数の巣が営巣されている木もあり、ヤマザクラは枝が広がって生えやすいので、営巣もしやすいのではと思います。
もし北海道で植林された針葉樹がなかったら、ひょっとすると、こういう枝振りの木に営巣するのかもしれませんね…

針葉樹に営巣というと、営巣木の枯死が心配なのですが、北海道ではどうですか?


2004/11/12(Fri) 23:23      まつ@管理人      Re: 木の好み

アオサギが好きな木、これだというのがあれば面白いのですが、私が見てきた北海道ではけっこう何にでも巣をつくっているようです。北海道では高木といっても南の地方ほど種類数が多くないので、前に書いた40種で主要な高木のほぼ全てが利用されているといった感じです。しらいさんが書かれているヤマザクラも利用されていますよ。こちらはエゾヤマザクラですが。ただ数は少ないです。
広葉樹だけに限れば、こちらでもっとも利用が多いのはミズナラで、その割合は8%近くになります。他に多いのはハルニレ、ケヤマハンノキといったところ。それ以外の樹種は軒並み3%にも達しません。
しかし、樹種別の利用割合は、単にその地域の樹種構成を反映しているだけかもしれません。その辺のことは営巣木以外の木の種構成を調べてないので何とも言えないのですが、印象では営巣木の樹種の割合はその地域の樹木の種構成とたいして変わらないように思えました。
そこで例外なのがカラマツというわけです。先にカラマツは営巣木全体の約4割を占めると書きましたが、これは実際の種構成の割合と大きくかけ離れています。トドマツ、ドイツトウヒといった他の針葉樹にしてもこのことは同じです。これらの多くは防風林など人工的に植えられたもので、林の周囲が開けていたり樹冠が均一に揃っていたりと、自然林にはない特徴があります。そういうところがアオサギに気に入られているのかもしれません。つまり、見通しが利くということです。あと細かい点ですが、カラマツは巣材とする小枝に多くの突起(短枝の部分)がありますから、巣をつくるときに組みやすく、しっかりした巣がつくれるのかもしれません。

ところで、北海道で針葉樹の利用が多いのは確かなのですが、それは営巣木の本数で見た場合の話です。広葉樹と針葉樹のどちらに多くの巣がかけられているかとなると、広葉樹のほうがはるかに多くなります。針葉樹は1本に1巣、多くても2,3巣といったところですが、広葉樹は10巣以上というのも珍しくないですから、本数は少なくても巣数は多くなるのです。
ついでながら、1本あたりの巣の数でいうと、私が見た中でもっとも多かったのは96個の巣がかけられたカツラの大木でした。あの光景は忘れられません。

それから糞による営巣木の枯死についてですが、私は皆さんが大騒ぎするほど影響は大きくないと思っています。たしかに、営巣木に枯れ木が目立つコロニーはあります。しかしその一方、何十年も同じ所で営巣しているにもかかわらず全く枯れる気配のないコロニーもあります。いろいろな環境要因が絡んでくるので難しいところですが、少なくともサギがいるから必ず木が枯れるというわけではないようです。
営巣木への糞の影響については前にもここで少し触れたことがあります。このページに保存していますのでよろしければ御覧になってください。

余談になりますが、その昔、家の近くにサギが巣をつくるのは有り難いことだったようです。それは、サギの糞が畑に撒く肥料として重宝されたからで、そのサギたちがいなくなると長者の家が没落したという話もあります。


2004/11/24(Wed) 17:54      しらい@アオサギネット      Re: 木の好み

まつさんの仰るように、その場所にある木を利用しているというのは、南関東でもその傾向があるようです(場所は、主要な採食場所の、ねぐらにならない、一段奥という感じで、木の好みがなさそうですが…)。また、巣をかけやすい木には複数掛けると言うのも、同じですね。大きなソメイヨシノに10個以上は、多摩動物公園コロニーでも見かけます。96巣あるカツラの木というのはすごいですね。

サギ山ができると林が枯れるという直接的な関係には、私も疑いをもっていて、営巣樹種や営巣密度、フン利用の有無(最近ではあまり利用がないと思う)が関係すると思っています。最近でも、林の枯死を心配してコロニーの追い出しをした事例がいくつかあるようですが、コロニーサイトの環境も考慮して、追い出しをするかどうか、考える必要があるのかもしれません。


2004/11/25(Thu) 20:42      まつ@管理人      Re: 木の好み

じつは、96巣といっても全ての巣が利用されているわけではありません。巣を数えたのは繁殖が終わった後なので、実際に使っっていたかどうかは確かめていないのです。繁殖期にはその全体が観察できないので確かなことは分かりませんが、それでも少なくとも40つがい程度は営巣していたように思います。その周りの木も同じように賑やかでそれはもう壮観でした。
残念ながら、このコロニーは例のアライグマ騒動(本当にアライグマだけが原因かというと怪しいですが)ですっかり見捨てられてしまいました。今はひとつの巣さえ残っていません。

それからサギのフンについてですが、しらいさんが挙げられた点の他に、繁殖期の雨量や地形もかなり影響しているのではないかと私は思っています。雨が多くフンが流れやすい地形(斜面)では害も少ないのではないかと。
アオサギの個体数は確実に増えていますし、環境の変化とともに民有林に営巣する場合も以前より多くなっているようです。そういう意味では、今後、人との軋轢がいっそう増えてくるかもしれません。木に何らかの影響があることは確かだと思いますが、程度の問題でもありますし、被害が必要以上に誇張されアオサギが目の敵にされることのないようにしたいものです。
サギのフンの問題は、今後きちんとした調査研究が必要ですね。

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