アオサギを議論するページ

インディアンの昔話

北米のネイティブアメリカンの昔話にこんなのがありました。
以下に拙いながらも意訳してみましたので、正月の時間を持てあましている方はどうぞ。

— サギとハチドリ —

むかしむかし、あるところにサギとハチドリ(ハミングバード)がいました。ふたりは大の仲良しで、サギは大きな魚を、ハチドリは小さな魚を食べて暮らしていました。

ある日、ハチドリがサギに言いました。「サギさん、サギさん、ここには魚があんまりいないね。そこでひとつ相談なんだけど、競争で勝ったほうが魚を独り占めにするっていうのはどうだい?」

サギはそれは良い考えだと思いました。そこでふたりは、ずっと遠くの川の、年老いた枯れ木まで競争することにしました。

翌朝、ふたりは一緒にスタートしました。ハチドリは素早くぶんぶん飛び、サギは大きな翼でゆったりと羽ばたいていきました。少し飛ぶと、きれいなお花畑がありました。その美しさに心を奪われたハチドリは、下りていって花の蜜を吸いはじめました。

しばらくすると、ハチドリの頭の上をサギが追い抜いていきました。それに気付いたハチドリは急いで飛び上がり、ぶんぶん飛んで、あっという間にサギを追い抜いていきました。それでもサギは、大きな翼でゆったりと羽ばたいているのでした。

せわしなく動き回り疲れたハチドリは、日が暮れると一寝入りすることに決めました。そして、とまるのに格好の枝を見つけると、一晩中ぐっすり眠りました。サギのほうはというと、夜の間もやっぱり大きな翼でゆったりと羽ばたき続けていたのです。

朝になってハチドリが目を覚ますと、はるか先にサギが飛んでいくのが見えました。ハチドリはサギに追いつくため、一生懸命ぶんぶん飛ばなければなりませんでした。やがてハチドリはサギを追い越し、大きなサギは後ろの方に遠ざかっていきました。

しばらく飛んでいると、きれいなお花畑が見えてきました。それに気付いたハチドリは、また下りていって、花から花へと気ぜわしく飛び回り、花の蜜を吸いはじめました。そして、おいしい蜜とお花畑のきれいな景色にうっとりし、頭の上を大きなサギが通り過ぎたことにも気付きませんでした。

しばらくして、自分が競争していることを思い出したハチドリは、慌ててサギの後を追い駆けました。ぶんぶん飛んだハチドリは、ほどなくサギを追い抜いていきました。それでもサギは、いつもどおり大きな翼でゆっくりと羽ばたいていくのでした。

次の日もその次の日も、サギとハチドリの競争は続きました。ハチドリはお花畑で素晴らしいいっときを過ごし、夜になると疲れて眠りました。サギはというと、大きな翼でゆったりと羽ばたきながら、昼も夜もただ黙々と飛び続けていました。

さて、四日目の朝になりました。ぐっすり眠ったハチドリは元気いっぱいです。すぐにゴールを目指してぶんぶん飛んでいきました。そして、とうとう川のほとりの年老いた枯れ木に辿り着きました。けれども、ハチドリがその木のてっぺんに見たものは、なんとあのゆっくり飛んでいたサギではありませんか。

その日からというもの、川という川、湖という湖にいる魚は全てサギのものになりました。そして、ハチドリのほうはというと、すっかりお花畑のとりこになり、花から花へ飛び回りながら、おいしい蜜をたっぷり吸って暮らしましたとさ。

おしまい。

これはアメリカ南東部に住むヒチティ族の昔話です。あの辺りのサギということは、オオアオサギと見てまず間違いないでしょう。話の内容もさることながら、アオサギをも凌ぐ巨体が昼夜兼行で黙々と飛び続ける様は、イメージするだけで何だか壮大な気分になれます。一見、イソップのウサギとカメの話に似ていますが、こちらのほうは、途中でサボっていると負けるよといった教訓じみた話ではなく、最後はサギもハチドリも両者ハッピーエンド。いいですね、こんな世界。

ページの先頭に戻る