アオサギを議論するページ

林業被害

林業被害

2004/08/01(Sun) 01:05      知樹      大津池の過去

大津池は小学生の時から今まで10年見てきているのですが、ここの掲示板で池の事が話題になっていましたので、参考になればと思い、過去の写真を添付させて頂きます。

94年の写真は北側からの物しかないため、96年の写真になります。
上から96年 今年3月 今年7月です。
94年は大津池でツバメのねぐらが発見され注目された年で、その頃からサギのコロニーも注目され始めました。
当時は確かにサギの数が多く、この島(宝島と言います。)がサギで白くなっていたのを覚えています。アオサギよりもダイサギやコサギが多かったように思います。
その後、糞害や台風の影響で島の樹木が枯れていき、2001年頃から急激に増えたカワウの影響で今現在のような姿になりました。
今でも島の中腹部では主にコサギが営巣していますが、アオサギが営巣していた島の上部はカワウに占領されている状況です。


2004/08/01(Sun) 13:36      まつ@管理人      Re: 大津池の過去

大津池の貴重な資料写真ありがとうございました。
名前が宝島なだけになんだか余計に痛ましいですね。
木の被害、どこまでがサギの仕業でどこからがカワウの影響か気になるところです。以前、鳥取のほうで私も同じような光景を目にしたことがありました。そこも宝島と同じような小島なのですが、カワウが営巣していたということで、これはもう、もののみごとに丸裸にされていました。おそらく同じような惨劇の場は全国各地にあるのでしょう。

ただ、サギが営巣しているだけではここまではひどくならないと思います。樹種や気象条件など様々な要因が絡んでくるので一概には言えませんが、100つがい以上が何十年も営巣して、未だにどの木もピンピンしているようコロニーも知っています。カワウの生態についてはあまり分からないのですが、サギの場合より被害がひどくなるのは、巣材にするため枝をよく折るのがひとつの理由なのでは? サギも多少は折っていますが大部分は地上から拾っています。それと、カワウはサギにくらべ高い密度で営巣しているように思うのですが、実際はどうなのでしょう? 密度が高ければ糞の被害も結構なものになると思うのですが。

アオサギについても、糞の被害はよく指摘されるところです。「サギが居着くと山が死ぬ」などと大げさなことを言う人もいます。けれども、木に対して実際どの程度の影響があるのかはよく分かっていません。魚食性のサギは糞の中にリンを多く含むので、それが林床に撒かれると、土壌中の鉄と結合して燐酸鉄になります。この燐酸鉄というのが曲者で、土壌を固定して木が養分などを吸収するのを阻害するらしいのです。おそらく場合によってはそういったこともあるでしょう。あるいは、糞そのものが葉にかかって光合成を妨げることのほうが、より直接的で木へのダメージも大きいかもしれません。この辺の事情は全く門外漢なのでもし間違っていたらご指摘ください。
ただ、リン自体は植物にとって必要な養分であることも事実です。

ちょっと脱線しますが、この前、あるシンポジウムでC.W.ニコルさんの「森と海の曼荼羅」という講演を聴きました。海で育ったサケが森を豊かにするという話です。つまり、川を遡ったサケをクマが捕らえ、それを森の奥まで運んで食べるので、その食べ残しや何やかやで海の栄養が森に還元されるという話でした。そのようにして海の栄養を得た森では木の成長が良くなるそうです。逆に、堰などがあってサケがそれ以上上流へ上れないような所では、そこから上の森の木は育ちが良くないのだとか。

地上から海への物質移動は重力に逆らわなければ一方向的なものですが、川を遡る魚もいれば空を飛んで水中の資源を運んでいる鳥もいるわけで、逆方向への物質移動はつねに起こり続けています。カワウによって丸坊主にされた木々のケースは、視点を変えれば少し極端ではありますが自然のなせる意味ある行為とも言えるわけです。一時的な状況をみると極端でも長い時間で見れば自然にとっては必要なことなのかもしれません。
ただ、今日のカワウによる木への被害が、人為的な影響でカワウが限られた営巣場所しか選べなくなっていることの結果だとすればとても心配なことですが…。

海から森への物質循環にアオサギが一役買っているというテーマで、北海道大学の上野裕介さんと堀正和さんが研究しています。短く分かりやすく書かれていますので、興味のある方は是非ご一読ください。
上野裕介さんの研究
堀正和さんの研究

2003/06/23(Mon) 23:16      まつ@管理人      フン害

「サギのフンは木を枯らすのか?」という問題です。影響があることは間違いないでしょうけど、どの程度の影響なのか、また、どういったメカニズムで作用しているのかなど、前々から気になっていた問題です。ですが、分からないまま放ったらかしにしていました。今日たまたま尋ねられることがあったので、分かりそうな人数人に当たって話を組み立ててみました。以下は聞きかじりの知識を寄せ集めたものです。

御存知のように、巣にいるサギは、葉っぱが真っ白になるほどフンを撒き散らします。その結果、物理的に光合成ができなくなり木が弱るということが考えられます。これは、見たまま直感で分かる因果関係です。もうひとつは、フンが地上に落ちる場合です。サギ類の多くは魚を主食にしているため、フンには多量のリンが含まれています。リンそのものが植物に悪さをするわけではないのですが、これが土壌に吸収されると土壌中の鉄と結合してリン酸鉄というものになります。これが厄介な代物で、土壌が固定され、木が根っこから栄養素などを吸収するのを妨げるらしいのです。この辺の事情は素人なので、もし間違っていたら御指摘下さい。

もっとも、サギが営巣したからといって、必ずしも木が枯れるわけではありません。木へのダメージはサギの営巣密度によっても違ってきますし、木の種類によってもフンに敏感に反応するものとそうでないものがあるはずです。また、土壌の性質も関係するでしょう。さらに、その土地の気象、とくに雨量は関係がありそうです。繁殖期間中の降雨は、葉っぱに降り積もるフンをきれいに洗い流してくれるでしょうし、土壌に蓄積されたリンを幾分か希釈してくれることでしょう。

私個人としては、一般に想像されているほど木への影響は大きくないという印象を持っています。実際、何十年にもわたって同じ場所で繁殖を繰り返しながら、全くと言っていいほどダメージが見られないコロニーもあります(もっとも、これはやばいなと思うコロニーもありますが)。実に多様な立地環境に営巣するサギですから、フンの被害もコロニーによって全く異なっているはずです。「サギが来ると森が死ぬ」と、まことしやかに言う人もいます。そうなる場合が全く無いとは言えませんが、自然の中での出来事がそれほど単純に言い切れるものでないことも、また確かだと思うのです。

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