アオサギを議論するページ

同じ目線で気にかける

コロニーが壊滅したという見出しで何事かと思ったら、竜巻にやられたのですね。アメリカのオオアオサギの話です。 ⇒ StarTribune(2011年5月23日付)

記事を読まなくても写真が全てを物語っています。ここにはもとも100前後のつがいが営巣していたんだとか。今はその面影すらありません。枝に点々と見えるのは呆然と立ち尽くすオオアオサギでしょうか。そして、最後の写真。これは衝撃的でした。

なぜこれがショッキングなのか、しばし考えてしまいました。もちろん死体が写っているというのはあります。でも、それだけではないような気がするのです。

アメリカでは今年、例年より多い竜巻が発生し、あちこちで大きな被害が出ているそうです。記事にある竜巻は日曜に発生したもので、人も死んでいます。にもかかわらず、早くも翌日の新聞にこの話が載っているのです。それだけでもかなり異例な扱われ方だと思います。さらに、普通ならコロニーが壊滅したという話だけで終わりのはずなのに、災害でヒナの命が多数奪われたことにはっきり言及し、写真まで載せているわけです。人間の場合なら、災害があれば人的被害が記事になるのは当たり前。けれども、野性の生き物についてこのような取り上げ方をするのはとても珍しいのではないでしょうか。これは一見なんでもないようで、じつは画期的なことかもしれません。野性の動物に対して、人に対するのと同じ目線をもっていなければ書けない記事だと思います。

ついでにもうひとつ。これも数日前に載ったオオアオサギの話です。 ⇒ Akron Beacon Journal(2011年5月20日付)

御覧のとおり、オオアオサギの営巣木が巣をつけたまま倒れかかっています。どうも地盤が緩んだのが原因のようですね。1、2週間かけてだんだん傾いてきたそうです。そして、ただそれだけの記事です。写真を見ると、木が電線にひかかりそうな感じで、普通に考えれば、危険だからその前に木を切り倒すことになったとか、そうでなくても電線のことで対応に苦慮しているとか、その種の記事になりそうなところです。ところが、ここでは電線のデの字も出ないんですね。ただ、木にかけられている15個の巣が心配だ、と。

このふたつの話は全く別の場所で起きたことながら、どちらの記事にも同じ空気が流れているのを感じます。その空気はここ日本にももちろんあります。ただ、それはあくまで個々人のものであって社会全体で共有しているものではないのですね。ここで紹介した記事も、もしかしたら記者固有のものの見方が前面に表れただけかもしれません。けれど、もしこれが、彼らの属する社会が全体で共有する意識であるなら、そこには学ぶべきものがたくさんあるように思います。日本で人と野生動物のかかわり方を考える上でのヒントが数多く隠されているような気がするのです。

〔追記〕竜巻の被害はテレビニュースにもなっていました。 ⇒ KSTP TV(2011年5月24日)
犠牲になったオオアオサギは180羽(ほとんどはヒナ)にもなるそうです。ただ、200以上あった巣が全て無くなったということですから、行方不明のヒナがまだかなりいるのでしょう。映像に写っているのは運良く生き延びることのできたヒナ。まさに九死に一生を得たヒナたちです。


嵐の後

ゴールデンウィークも終わってしまいましたね。この間、ヒナの誕生ラッシュだったコロニーも多かったのではないでしょうか。北海道は連休中、みぞれや雪の舞うあいにくの天気でしたから、生まれたばかりのヒナには最初からずいぶん苛酷な環境だったと思います。寒さや雨もさることながら、サギたちにとって一番気の毒だったのは猛烈な風。ヒナのところも卵のところも関係なくかなりの被害があったようです。

風の翌日に訪れたコロニーでは、巣が1mほどずり落ちているのを目撃しました。しかも落ちかけの巣にはまだ卵が…。親鳥は落ちかけの巣に座るわけにもいかず、巣のすぐ傍らでただ立ち尽くすしかないようでした。別のコロニーでは枝があちこちで折れており、巣が幹ごと風にもっていかれて跡形もなくなったところもありました。

ただ、このように被害の様子があからさまに分かるケースはむしろ少なく、一見変化がないように見えて実は被害を被っている場合は意外と多いのではないかと思います。というのは、それだけの風が吹く中、親鳥が巣に留まっていられるのかという疑問があるからです。もともと大揺れに揺れる木のてっぺんで暮らしている鳥ですから、相当な風でも平気なのは確かです。けれども、折れた枝が飛んできたり周りの木が幹ごと折れるような暴風の中、それでも巣に留まり続けるのかどうか。アオサギの場合、身の危険を顧みず、何が何でも卵やヒナを守るということはあり得ないですから。人間の価値観で考えると無慈悲なように思えますけど、彼らは自分の身に何かあれば、その時点で卵もヒナもアウト。まずは自分の命を確保することが最重要です。そう考えると、これは限界というところで親鳥が巣を離れたとしても不思議ではなく、そうなれば後に残された卵やヒナには風の猛威に抵抗する術はありません。そのような条件で観察したことがないので本当のところは分かりませんが、こんなふうに犠牲になる卵やヒナは少なくないのではないかと思います。


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