アオサギを議論するページ

ヒナ誕生!

連休を間近に控えて、北海道もアオサギのヒナ誕生の季節を迎えました。同じ道内でも太平洋側など早くから飛来している地域は少し前からヒナが生まれていると思いますが、札幌あたりではまだこれからです。

そんな中、江別市のコロニーで今シーズンはじめてのヒナが誕生しました。まだ綿毛の頭が巣の上に少し見えるだけの小さなヒナで、おそらく23日か24日頃に生まれたと思われます(写真にはヒナは写っていません)。ただ、今のところヒナが生まれているのはこの巣だけのようで、他の巣にはまだ気配がありません。

現在、江別コロニーでは約150つがいが営巣しています。最初の十数羽がコロニーに飛来し、巣作りやディスプレイを始めたのが3月の半ば。今回のヒナの親は、そのとき真っ先に営巣をはじめたペアでした。それから40日ほどになります。今年はどういうわけか全体的に渡ってくるのが遅れ気味で、4月に入ってもなかなか数が揃いませんでした。さらに、4月4日にはけっこうな吹雪となり、巣作りをしていたサギたちのほとんどがコロニーから避難してしまいます。けれども、今回確認したヒナの親はそのときも巣に留まり卵を温め続けていました。そんな苦労を乗り越えての今回の朗報でした。

ところで、そのお節句の吹雪で巣を離れなかったのはたった3羽。卵があればさすがに放り出して逃げるわけにもいきませんから、3巣以外のペアはまだ産卵前だったのでしょう。とすれば、ほとんどのペアは4月4日以降に卵を産んだことになります。吹雪が収まってすぐに産み始めたとしてもヒナが孵化するのは25、6日先のこと。どうやら、本格的な誕生シーズンは来月になってからになりそうです。

さて、前回紹介したNYのオオアオサギですが、こちらのほうもヒナが生まれる時期がいよいよ近づいてきました。オオアオサギの場合、抱卵期間はアオサギより3日ほど長くて約28日とされています。1卵目を産んだのが現地時間の28日夜ですから、もういつ生まれてもおかしくありません。ぜひその瞬間に立ち会ってみてください。5卵ありますから5回チャンスがありますよ。(追記:日本時間4月28日8時46分に最初のヒナ誕生、同9時28分に2羽目が孵化しています。)

子育て実況中継

今このアオサギが有名、という話は聞いたことありませんが、オオアオサギなら今もっとも注目されているのはこの巣のペアのはずです。ニューヨークからオオアオサギの子育ての様子がネットでライブ中継されています。これはコーネル大学の鳥類学研究室が行っているもので、シーズンを通して現在の様子がどこからでもネットで見られます。こういうプロジェクトはいいですね。昼間の映像はもちろん鮮明、夜間でも画像は粗いながらかなりくっきり見ることができます。ちなみにニューヨークと日本の時差は13時間です。

このオオアオサギ、今は抱卵中で3つの卵を抱いています。3月28日、30日、4月1日とマニュアルどおりに1日おきに産んでますから、4卵目を産むとすれば4月3日でしょうか。サイトに書かれた情報によれば、3日の午後6時(日本だと4日の朝7時)頃が予定時間のようです。

これからしばらくはシーズン中もっとも静かな時で、ヒナが生まれるまではとくに目立ったイベントは起きないと思います。そして、順調にいけばヒナが生まれはじめるのはおそらく23、4日前後。そうなれば目が離せなくなりますよ。次の瞬間に何かが起こるのではと期待しつつ、いつまででも見てしまいますから。けっこう中毒性がありますのでご注意を。

ついでに、サギ類ではないですが、同じようにハクトウワシのネット中継(夜間は白黒映像)もあります。こちらは去年からやっているもので、昨年はものすごい反響がありました。今はすでに3羽のヒナが生まれているせいか、今年も数万人単位の人たちが常時この映像を見ています。それに比べれば、オオアオサギのほうはまだ1500人がいいところ。これがヒナ誕生が近づくと、ツイッターなどで情報が拡がって一挙に視聴者数が増えるんでしょうね。今年はオオアオサギファンになる人が増えそうです。

神々の王

《注意》この記事はエイプリルフール用に書いた完全な作り話です。4月1日に最後まで読まれた皆さん、寛大な心で嘘にお付き合いいただきありがとうございました。

あっという間にもう四月。この春は本州方面の天候がぱっとしなかったせいか、アオサギの渡りもだいぶん遅れているようですね。それでももう四月ですから、まだのんびり構えているサギたちもそろそろ本気になってくる頃でしょう。

さて、話変わって、今回は久々に古代エジプトのべヌウについて書いてみたいと思います。ベヌウは当サイトでも何度も取り上げたことがありますが、アオサギがモチーフになった古代エジプトの聖鳥です。左の写真の赤枠で囲んだ部分が、ヒエログリフで書かれたベヌウという文字。そして、枠の中の右端に描かれた、膝を立てて座っている人の絵によって、ベヌウがただの鳥でなく神であることが示されています。

ところで、この写真で紹介した文章は『死者の書』にあるものですが、大英博物館のエジプト学者であるヴォリス・バッジョが英訳したものを、拙いながら和訳してみました。だいたい以下のようなことが書かれています。

「我は原初の丘より飛びいでしものなり。我はケペラのごとく来たれり。我は植物の如く芽を吹きたり。我は亀の如く甲羅の中に隠れたり。我の名はベヌウ。全ての神々の王なり。」

どうでしょう。ベヌウというのはじつはただの鳥でないどころか、ただの神ですらなく、神々の王、最高神だったのですね。エジプトで有名な神といえば、ラーとかオシリスとかがまず思いつきますけど、そうした神々が擡頭してくる以前はベヌウこそが神々の王だったのです。それもそのはずで、エジプト中王国の初期の頃は、ベヌウはもとよりアオサギが最高度に崇拝されていたことが、死者の書だけでなく様々な文書によって明らかにされています。サギの一声で、人々はおろか、神々までもが皆ひれ伏していたのです。

たとえば、紀元前5世紀にギリシャ、ケファロニア島のアッゲロスが書いたと言われているエジプトの旅行記。その本に、彼がヘリオポリスの神官から聞いた話として次のような文が収められています。

「千五百年前(訳注:今から4000年前)頃までは、人々に最も崇められていた動物はアオサギで、コロニーの近くには必ず立派な祭壇が設けられていたという。(中略)そして、ひとたびアオサギのコロニーが放棄されると、人々はアオサギのためにペルセアの木を組み合わせて壮大なピラミッドをつくったという。」(小松修著『古代エジプト人の動物観』より)

いま考えればとんでもなく滑稽に思えるかもしれませんが、当時の人々にとってはアオサギは自分たちよりはるかに多くの能力をもち、畏敬するのが当たり前の存在だったのでしょう。人間など飛ぶ能力さえ無いのですからね。そんな謙虚だった人間がいつのまにかどうでもいいような仮初めの技術やくだらない思想を身につけ、自分たちだけが他の動物たちとは違う高級な次元にでも住んでいるかのように思い上がってしまった、そのなれの果てが現在の私たちなわけですね。

4000年前に木でつくられたピラミッドは、残念ながら現在ではそのかけらさえ残っていません。乾燥したエジプトの気候とはいえ、材質が木では4000年の歳月はさすがに長すぎました。ただ幸いなことに、カルナック神殿に残された壁画から、私たちはその壮麗な建築の一端を伺い知ることができます。大英博物館のサイトに写真があるので紹介しておきますね。ピラミッドの先端にとまっているのは、もちろんアオサギです。 ⇒ アオサギピラミッドの写真

ページの先頭に戻る