アオサギを議論するページ

子育てライブ中継

ここ札幌にアオサギがやってきたのがまだ雪深い3月半ば。それからひと月半経って、ようやくヒナの生まれる季節となりました。札幌の隣の江別コロニーでもじっくり観察しているとヒナの生まれているサインを僅かながら目にすることができます。今のところ気配のある巣はまだ数えるほどしかありませんが、これから2、3週間はヒナ誕生のラッシュとなりそうです。

とはいえ、ヒナが生まれているかどうかは遠くから見てそうそう分かるものではありません。長時間見続けて、たまたま親鳥がヒナに給餌するのを見かけたとか、巣の側面の隙間から微かに白いものが動くの見えたとか、本当にごく僅かなサインに頼るしかないのが実情ではないでしょうか。もちろん、そんな苦労をして知りえたことだからこそ分かったときの喜びもひとしおだったりするのですが。

けれども、間近ではっきり見られるのならそれに越したことはありません。今回はそんな機会を提供してくれるサイトをいくつかご紹介します。いずれも巣やその近くにビデオカメラを設置し、ネットを通じて四六時中営巣の様子を配信しているサイトです。ただ、残念ながらアオサギを撮したものは無く、全てアメリカのオオアオサギが対象です。

落巣まずひとつめはニューヨークのコーネル大学のプロジェクト。これは当サイトでも何度か紹介したことがありますし、今年も楽しみにされていた方は多いことでしょう。このプロジェクトは一昨年から始まっており、今年で3年目。私もいつ営巣を始めるのかと楽しみにしていたところです。ところが、残念なことにこの時期になっても巣作りが始まっていません。ビデオはまだ回っているものの、数日前にはとうとう巣が落ちてしまいました(右の写真)。というわけで、今シーズンはここでの営巣はもう無いとみてほぼ間違いないと思います。これがライブ中継の難しいところですね。営巣が始まってからビデオを仕掛けるわけにはいきませんから。

マガモ-3ところで、この巣は落ちる前の一時期、マガモ夫婦がしばしば立ち寄っていました。立ち寄るどころではなく、じつは営巣しようとしていたようなのです。とくに雌のほうは巣に穴を開け、せっせと巣材を動かして内部にこじんまりした空間をつくってしまいました。巣の中に巣穴という奇妙な構造物をつくったわけです。そして毎朝やってきては1時間といわず巣作りをしたり中でくつろいだり、そんな日が何日も続きました。そんなこともあって巣の崩壊が早まったのかもしれません。ともあれ、今シーズンはマガモもオオアオサギも営巣しないという寂しい結果になりました。来年、再び営巣するのか、これっきりなのか気になるところです。

なお、同サイトのメイン映像はこれまでは巣の様子を固定カメラで写したものでしたが、営巣の可能性がほぼ無くなったことから、現在は周辺の池の様子を遠隔操作のできるサブカメラに切り替えて撮しています。これはこれでカナダガンやビーバーなどがいて楽しいですよ。【追記:5月6日、昨年営巣していたオオアオサギの雄が巣材を営巣木に運んできたました。運んできた後また持ち去ったということですが、どうやら営巣の可能性はまだ途切れていないようです。】

millbrookさて、次に紹介するのは今シーズンがはじめてのプロジェクト。ニューヨーク、Millbrookでのライブビデオです。こちらはサイト名がMillbrook高校となっていることからも分かるように高校生が授業の一環としてやっています。夢のような授業ですね。実際、高校自体、不思議な雰囲気を醸し出しています。そもそも同サイトにはTrevor動物園のライブビデオと書かれてあって、高校なのか動物園なのかよく分かりません。調べてみるとどうも高校の敷地内に動物園があるようなのです。事実が分かったところで余計混乱するだけですが…。

それはさておき、このライブ映像はカメラの解像度が良いのか視界がとてもクリアです。普段は引いた映像が多いようですが、ズームの遠隔操作ができるようで、親鳥が立ち上がると卵の様子をズームアップしてくれたりします。ヒナが生まれたらその様子を手に取るように見せてくれることでしょう。ただ、このカメラはコーネル大学の場合とは違って営巣木とは別の木に設置されているため、風が吹くと映像がかなり揺れるのが難点と言えば難点です。

気になるヒナですが、1卵目を産卵したのが4月8日で、その後、10日、12日、14日、16日ときれいに1日おきに産んでいます。オオアオサギの場合、産卵期間はアオサギよりやや長くちょうどひと月ぐらいなので、最初の卵にひびが入りはじめるのはこの連休が明けでしょうか。もうすぐですよ。楽しみですね。

horicon3番目に紹介するのはウィスコンシン州でのプロジェクト。ホリコン湿原で営巣するオオアオサギを対象にしたライブ映像です。こちらも今年から始めたプロジェクトで、州の天然資源局が主体となって行っています。ただ、残念ながら画質があまりよくありません。

とはいえ、この映像はこの映像でまた面白いところがあります。じつはこのカメラが撮っているのは手前の巣だけではないのですね。後方の棒のような木に奇妙にくっついたもしゃもしゃ、あれが全部オオアオサギの巣なのです。つまりコロニーをまとめて撮しているというわけです。本来、オオアオサギはコロニーで生活する鳥ですから、こういう状況のほうが自然ですし、運が良ければコロニーならではの行動も観察できそうです。

ところで、このなんとなくシュールに見える光景にはそれなりの理由があります。じつはこのコロニー、天然の樹木ではなくすべて人工営巣木につくられているのですね。もともとは天然の樹林で営巣していたのですが、1990年代の初めに病気や嵐で木が倒壊するなどしてコロニーが衰退、天然資源局がその救済策として用いたのが人工営巣木だったのです。サイトを読むと現在は200ほどのつがいが営巣しているとのことです。

さて、こちらの卵はというと、4月12日、14日、16日の3卵ということですから、Millbrookのヒナとそう違わない時期にヒナが孵りそうですね。両方の巣でヒナの成長に違いはあるのでしょうか? いろいろ興味が尽きません。

なお、ここのコロニーについては4年ほど前に当サイトで紹介したことがあります。人工営巣木に焦点を当てて記事にしていますので興味のある方はぜひ御覧ください。

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