アオサギを議論するページ

他に住む場所がないから

ここしばらくアオサギの営巣場所についていろいろ考えています。というのも北海道の営巣地を調べてみると、昔は無かったタイプの営巣地が最近になってぱらぱらと見られるようになってきたからです。以前にもご紹介しましたが、たとえば瀬棚や北檜山のコロニーではダム湖やため池の半ば浸水した木に巣がかけられています。また、江差町や福島町など、沖合の島で暮らすサギたちもいます。それから、少し前まではダム湖のブイで営巣していたアオサギもいました。じつはこれらのコロニーにはひとつの共通点があります。いずれのコロニーも巣の周りが水で囲まれているのです。これは地上性捕食者を近寄らせないための工夫だと思われます。このようなタイプのコロニーは全道で9ヶ所確認されていますが、いずれも大なり小なり不便を抱えています。通常の営巣環境と比べると巣立ちに成功するヒナ数もおそらく少ないでしょう。好き好んでそんな場所に巣をつくるとは考えられません。他に子育てできる場所がないから仕方なく不便な環境を選んでいるのです。

では、なぜ従来のような環境で普通に樹上営巣をしないのでしょうか? これはほぼ間違いなく地上性捕食者が原因です。北海道の場合、捕食者はアライグマであったりヒグマであったり。もしかすると両方かもしれません。実際、北海道ではアライグマもヒグマも木に登ってアオサギのヒナを襲っているところが目撃されています。彼らのいる場所と地続きで暮らす限りいつ襲撃されても不思議ではないのです。襲われるのが嫌なら何らかの障壁を築いて彼らが巣にアプローチできないようにするしかありません。その障壁のひとつが水というわけです。

そのことで最近ひとつ思いついたことがあります。かつて釧路湿原にあったコロニーのことです。ここは昔は道内屈指の大規模コロニーでしたが、2000年頃を最後に消滅していまいました。放棄された原因については野火や餌場環境の変化などいろいろ言われています。しかし、湿原の中にあるコロニーのため人目に触れることがほとんどく、確かなことは分かっていません。私はこのコロニーももしかすると地上性捕食者の犠牲になったのではないかと考えています。その推理でいくと諸悪の根源はこの湿原の真ん中には堤防道路にあります。こんな愚かなものをつくったために湿原が北と南に分断され、コロニーのあった南半分が乾燥化してしまったのです。乾燥化すればそれまで近寄れなかった湿原の内部にほ乳類が侵入できるようになります。そうなればアオサギの聖域にヒグマやアライグマが到達するのはもはや時間の問題。不幸なことに釧路湿原のサギたちは樹高の低いハンノキ林(多くは10m以下)に営巣しており、もし狙われたとしたらひとたまりもなかったでしょう。 もちろんこれはただの推測というか思いつきに過ぎませんが、可能性としてはまったく無視できるものでもないような気がします。

ところで、さっき捕食者を近寄らせないための障壁について書きました。そのひとつが水であると。じつはもうひとつあります。アライグマやヒグマが来ない場所、それは街中です。最近、街中の小さな樹林にコロニーができることが多くなってきています。住宅街の中にある孤立林はアオサギにとっては格好の避難所なのです。

こうした避難所は街の中や水で囲まれた場所だけではないかもしれません。普段、何気なく見るコロニーも、なぜこんな場所にあるのかと考えると疑問に思う場所が少なくありません。そして、それを地上性捕食者からの逃避という視点で見直してみると納得できるケースが多々あるのです。すべてをアライグマやヒグマのせいにはできないにしても、従来とは違う変な場所につくられたコロニーが地上性捕食者からの逃避を目的としている場合は想像以上に多いのではないかと思います。

道の統計によると、アライグマもヒグマもここ数十年増加傾向にあるようです(アライグマの資料ヒグマの資料)。加えて、ここ数十年のスパンで見るとアオサギも増えています。両者とも増えたことでお互いに出会う機会が多くなり、結果としてアオサギが襲われるケースも増えたということなのでしょう。

だとすれば、おかしなところで子育てするアオサギは今後も増えるかもしれません。けれども、彼らが避難所として使えるような都合の良い場所が果たしてどれだけあるでしょうか? 街中の孤立林で人が快く受け入れてくれるところはそう簡単には見つけられません。水で囲まれた営巣環境を見つけるのはさらに難しいことでしょう。

昔は北海道は湿地だらけで、湿原内のハンノキ林など地上性捕食者をシャットアウトできる優れた営巣環境があちこちにありました。ところがそうした場所は人がどんどん潰していき、びじゃびじゃな環境は今ではもう猫の額ほどになってしまいました。アオサギは樹林があればどこでも営巣できると考えるのは大間違いです。彼らにとって安全な樹林はもう僅かしか残っていないのかもしれません。アオサギにとって湿地がどれほど重要な環境だったか、今あらためて考えさせられています。


謹賀新年

明けましておめでとうございます。

毎年アオサギしか登場しない私の年賀状ですが、今年はトリ年なので例年ほど違和感はないですね。ということで、今回はサギたちを4羽並べてみました。じつはこの中に1羽だけ変わり者がいます。3羽は日本のアオサギ、1羽は北米のオオアオサギです。オオアオサギがいるのは北米だけ。一方のアオサギはアメリカ大陸にはいません。なので自然界で両者が出会うことはまずないのです。

さて、そのオオアオサギ、どの鳥だか分かりましたでしょうか?

左上だと思われた方、残念です。たしかに外見はこの鳥がもっとも違って見えますが、それはこの鳥がまだ若いからなのですね。まだ1歳になるかならないかというところ。他の3羽に比べて肩や側頭の羽毛がまだ黒くなっていません。成鳥の見かけになるにはもう1年待つ必要があります。

1羽だけくちばしが赤いのに気付いて右下だと答えられた方、これも間違いです。じつはこの鳥、婚姻色に染まっているのです。春先、アオサギが一番艶やかになったときの装いがこれです。この時期を過ぎると婚姻色はだんだん褪せてくすんだ黄色に戻ります。左下の鳥がそうですね。子育ての一番忙しい時期が過ぎて一段落といった感じでしょうか。

というわけで正解は右上の鳥でした。オオアオサギのくちばしは求愛期も黄色くなるていどでアオサギほど鮮やかには変色しません。首もアオサギのように真っ白ではなくやや灰色。と書くとアオサギのほうがなんだか派手な気がしますが、オオアオサギも南のほうに行くと真っ白(アルビノではない)になったりするのでなかなか侮れないのです。

ちょっと問題が難しかったですね。私も同じものを他の人から出題されていたら悩んだかもしれません。じつはアオサギの3枚は旭川の同じコロニーで撮っています。針葉樹の植林地にあるコロニーで、写真に写っている木はすべてドイツトウヒ。そこに着目された方、鋭いです!

そんなことで今年も引き続きジャンルにこだわらずアオサギのことを何でも書いていきたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いします。


越冬サギ

毎年この時期はこちらで冬を越すアオサギのことが気になり、江別の越冬場所(写真)をときどき訪ねています。ここでアオサギが冬越しするようになってもう20年近くになります。以前はここに30羽ものアオサギが集まっていました。ところが、このところ年々少しずつ減ってきているようなのです。今年も冬のはじめに7羽。今はもっと少ないかもしれません。もとより大雪低温の土地ですから、こんなところに残ることのほうが珍しいのです。条件の良い場所を他に見つけて移動したのかもしれません。あるいは、この地域で越冬するサギ自体が減ってきているのかも。以前は皆、南へ渡っていたのですから、ここから姿を消したとしても不思議はないのです。まあ、そうは言っても今までいたのがだんだんいなくなるのは寂しいものですね。

大雪に埋もれながら今年も慌ただしく暮れていきそうです。皆さん、良いお年をお迎えください。


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