アオサギを議論するページ

アライグマの襲撃

先日、当サイトの掲示板のほうで、道内のあるコロニーでアオサギがアライグマに襲われているとの情報が寄せられました。その後、お知らせいただいた方と連絡をとり、私も現地に行って確認してきました。行政のほうも一応の対策をとってくれたようです。今回はその一連のできごとの報告です。

掲示板ではコロニーの場所は書かれていませんが、岩見沢市志文にあるコロニーです。私が訪れた時は、見える範囲の20ほどの巣にほぼ全て親がおり、アライグマの影響といってもそれほどではないのかなという印象でした。ただ、考えてみれば、いったんアライグマにやられてもこの時期なら再営巣しますから、被害があった巣を含め、どの巣にも親がいて当然なんですね。空の巣が目につくほどの状況になっていれば、それこそすでに個体群の一部がコロニーを捨てて別の場所に移動しはじめているとも考えられるわけで、そうなればコロニーの崩壊を止めるのはかなり難しくなります。いまのところ、そこまで危険な状態にはなっていないのかなという感じでした。

とはいえ、アライグマの被害が収まっているわけでは全くありません。私がコロニーを観察していて静かだったのは最初のうちだけ。ほどなくアオサギの発するゴーという普段聞かない奇声でコロニーが騒然となりました。これは捕食者を威嚇するための声で、猛禽にコロニーが襲撃された時もこれと同じ声を出します。

さて、コロニー内で異変が起こっている場所を探すと、親鳥たちが威嚇する先に、どっかりと巣に腰を据えたアライグマの姿がありました。襲われている巣は20メートル近い巨木の樹冠近く。周辺の枝の太さは直径10センチあるかないかといったところです。(写真、左からふたつ目の誰もいないように見える巣にアライグマが居座っています。)

この巣でアライグマが何を食べていたかは分かりません。ただ、卵かヒナであるのは確かだと思います。ここには10分かそこら留まっていたでしょうか。やがて、食べ終えると、するすると枝を伝って下りていきました。アライグマが木に登るのは知っていましたが、あそこまで造作なく、まるで地面を歩くかのように木を昇降できるとは思いませんでした。あの様子では、アライグマにいったん目を付けられたら、どんなところに巣をつくろうとアオサギは逃れられないでしょう。

アライグマは幹を途中の二股まで下りると、そこからまた別の枝に上ったり下りたり。そのうち下まで降りていったようでした。が、安堵したのもつかの間、ふたたびアオサギの例の威嚇声が上がったかと思うと、先とは別の巣にまっしぐらに上っていくアライグマの姿がありました。アライグマは巣のそばまで来ても何の躊躇もなく、するすると巣に上がり込んでしまいます。親鳥も何もしないわけではなく、巣に這い上がろうとするアライグマの頭を2度ばかり突つきました。しかし、親鳥ができるのはそれが精一杯。アライグマが親鳥の攻撃で怯むことは全くありませんでした。こちらの巣では、アライグマはしきりに何かを引きちぎるような仕草をしていましたから、おそらくヒナが犠牲になったのだと思います。(写真は、ふたつ目の巣を襲ったアライグマ。ひとつ目の巣のすぐ下にある、親鳥のいた巣です。)

同じ捕食者でも猛禽の場合はアオサギの反撃にもあるていど効果があるように見えます。ところが、アライグマはまるで別次元の大胆さ。親鳥など最初からいないかのように全く無視して好き放題に荒らしていきました。

そもそも、アオサギとアライグマという組み合わせは、本来、自然界ではあり得ません。アライグマはもともと北米で暮らしている動物です。北米にはアオサギはおらず、代わりにオオアオサギが住んでいます。オオアオサギはアオサギを2、3割大きくしたようなものですから、多少はアライグマに抵抗できるのかもしれません。けれども、そのオオアオサギでさえ、時にはアライグマによってコロニーを放棄せざるを得なくなるのです。小柄なアオサギが太刀打ちできないのは無理もありません。

とはいえ、アオサギが襲われるのを手をこまねいて見ているわけにもいきません。先日、アライグマのことを私にお知らせくださった方は、木酢液を営巣木に塗ってこられたそうです。木酢液というのは山火事の臭いがするので、臭覚の敏感なほ乳類はそれを避ける傾向があるのだとか。そんなことで、私もアライグマに襲われるのを目の当たりにした後、同じく木酢液を木に塗布してきました。ただ、効果のほどは…。それほど強烈な刺激臭があるわけではありませんし、何も無い状況でなら避けることはあっても、その先に確実に食料があるという状況でわざわざ回避するとはちょっと思えませんでした。

じつは、この林は道が学術自然保護地区に指定しているということもあり、先日、道のほうにアライグマ対策がとれないかと相談をもちかけたところでした。具体的には、アライグマが営巣木に登れないよう、幹にあるていどの幅をもたせた鉄板を巻いてほしいというものです。その作業がおそらく今日行われたはずです。これは物理的な防御ですから木酢液よりは効果はあるはずです。ただ、メインの営巣木には巻いても全ての営巣木にまではおそらく手が回らないでしょうし、被害が全く無くなると期待するのはまだ早すぎるように思います。アライグマのほうもアオサギに手出しできないとなると、周辺の畑地の農作物に今まで以上に頼ることになるでしょうし。片方を立てれば片方が立たずで、困った状況が無くなるわけではありません。そもそもアオサギがいるからアライグマが寄って来るのだというような話にもなりかねず…。なんだかんだで頭の痛い問題です。


N.Y.の事件と千葉の事件

去年の夏、ニューヨークのとある川のほとりで、男二人がオオアオサギに石をぶつけたという事件がありました。銃で撃たれたとかではなく、石をぶつけられたのですから、よほど近くにいたのでしょう。サギたちが人を怖れなくなるのは本来は良いことなのでしょうけど、こういう碌でもない馬鹿がいるうちは、サギと人との距離が縮まることを素直には喜べませんね。被害に遭ったオオアオサギは、すぐリハビリセンターに連れて行かれたそうですが、羽も脚もずたずたの状態で手の施しようもなく、止むなく安楽死させられたということです。石を投げた当人は、事の始終を周囲にいた人々に目撃されており、ただちに通報、二人とも逮捕されています。なお、この事件は、投げた石がたまたまサギに当たったというようなものではなく、二人の男が相当な数の石を投げています。以下に当時の新聞記事を載せておきますので、詳しくお知りになりたい方は御覧になってください。5つのリンクのうち、3つは新聞社、残り2つはテレビ局とラジオ局で放送されたものです。ともかく、当時はけっこうな騒ぎだったのです。

110811 Killing of great blue heron sparks outrage, raises questions
110813 Irreparable damage – Blue heron beyond treatment after men hit it with a rock
110819 Men accused of torturing great blue heron in Jay
110820 Alleged killers of heron could face higher charges
110822 Essex County men injure blue heron

そして、つい先日、この二人の被告に判決が下されました。罰金、502ドル50セント。ひとつの命をこんな残虐非道なやり方で奪っておいて、4万円弱の金額で罪が償われるとはあまりにも馬鹿げています。記事につけられた読者からのコメントにも、もっと厳罰にすべきだという声が多くありました。もっとも、ニューヨークの州法では、この罪に対しては悲しいことにこの額が上限なんですね。6ヶ月以下の禁固刑があるものの、どうもそちらのほうも適用されなかったみたいです。なお、犯人のもう一人はこれまでにも相当の悪事を働いてきたようで、犯行当時も執行猶予期間中であり、即、刑務所送りとなりました。以下は判決についての記事です。

120113 Adirondack men sentenced for great blue heron attack on Ausable River
120113 NY men sentenced for stoning Blue Heron
120113 Men sentenced for hitting heron with rock

ついでなので、サギ類を巡る法律とその罰則について少し触れてみたいと思います。まずは、この事件のあったアメリカの事情から。今回の事件はニューヨーク州の州法に則って裁かれたと上に書きました。ただ、記事を読むと、州法でなく連邦法で裁かれる可能性も多少はあったようですね。この連邦法は渡り鳥条約法と呼ばれているもので、いくつかの二国間条約(日米間の渡り鳥保護条約も含む)を遵守するためにつくられた国内法です。これで裁かれると罰則はもっと重くなり、1万5千ドル以下の罰金か半年以下の懲役、またはその両方となります。これは1羽あたりの量刑で、犠牲になった鳥の数が多ければその分だけ積算されます。そのため、罰金も数万から数十万ドルになり、刑期も何十年に及ぶこともあります。何十年もの懲役刑が科されたという話はまだ聞いたことがありませんが、罰金が多額になることは希ではありません。とくに企業が引き起こす環境汚染が原因となった場合は、その被害が大きいため、数十万ドル単位の罰金が科せらているケースを時々見かけます。アメリカの渡り鳥条約法については以上のように私は理解しているのですが、専門ではありませんので、もし間違いがあればご指摘ください。

さて、日本の法律はどうでしょうか。日本でアオサギを直接守ってくれる法律は鳥獣保護法しかありません。これに違反してアオサギを殺傷したり卵を獲ったりすると、100万円以下の罰金か1年以下の懲役に処せられることになります。しかし、この罰則はあくまで上限であって、実際にはニューヨークの事例のようにがっかりするような判決が多い気がしてなりません。たとえば、もう7、8年前の話ですが、千葉県成東町でサギ類のコロニーが破壊された事件がありました。サギ類の鳴き声やフンが迷惑だというので、住民が子育て真っ最中のコロニーに重機で乗り入れ、199羽ものサギたちを殺したというとんでもない事件です。
2004年9月22日(毎日新聞)『成東町のサギ営巣地破壊 容疑で53歳男性を書類送検』
もちろん、この男は鳥獣保護違反で告発され、翌年、下記のような判決が出ています。
2005年8月31日(東京新聞)『サギの繁殖地(コロニー)破壊 199羽を死なせた男性を起訴猶予』
事件そのものも信じがたいことながら、この判決も信じられません。懲役もなし、罰金もなし。起訴猶予というのは、一応、前歴として記録はされますが、前科にすらなりません。私なんかは50キロの道を80で走ったため一発免停で立派な前科者(たしかにこれは悪いこと)ですが、199もの命を奪った者が私より罪が軽いなどとどうして納得できるでしょうか。怒髪天を衝くとはまさにこのこと。これは思い出すたびに理性を失いかけますね。ともかく、こんなことで、法の効力が維持できるのかとはなはだ心配になります。

一昨日、読んでいた本に次のような一文がありました。この本はとくに動物について書かれたものではありませんが、今回書いたことにたまたま符号する内容だったので書き留めておきます。

遠くから見るサギは美しいけれど、手なずけられず、煮ても食べられず、おしゃべりも仕込めないから、人間がそういうものと関係をもつ唯一の方法は、破滅させることでしかない。 (マーガレット・アトウッド『浮かびあがる』)

ニューヨークでオオアオサギが殺された理由もおそらくはこれと同じでしょう。千葉のケースも、いろいろ理由付けはできるにせよ、人と動物の関係に還元してしまえば、やはり同じことです。この短絡的な思考の中では、サギの命は羽のように軽いと思わざるをえません。法はそのことにどれだけ気付いているのでしょうか。


池からサギを追い払う方法

今年もオタマジャクシの降る季節になりましたね。⇒ こちら
今回はサギが犯人だと認めているようです。とんでもない推測をして大騒ぎするのもさすがに疲れたのでしょうか。素直に認められると却って寂しい気もしますが。

さて、それは置いておいて別の話です。先日、当サイトを御覧になった方から釣り池でのアオサギ防除についてメールでご質問をいただきました。じつは養魚場や釣り池でのアオサギの食害に困って当サイトを訪れる方はけっこういらっしゃいます。「アオサギ 被害」とか「アオサギ 防除」とかで検索すると当サイトが一番上に出てくるので、幸か不幸かここに辿り着いてしまうのですね。それだけアオサギの被害対策についてまともに書いているところが無いということなのでしょう。それを思うと、曲がりなりにも有用な情報をまとめなければと思うのですが、いつものことながら思うだけで一向に前に進みません。

そんなことで、今回はちょうど良い機会なので、お答えした内容の一部をここに書き留めておこうと思います。まとまったものでなく、とりあえず思いつくまま書きます。

釣り池での防除が難しいのはネットやテグスといった物理的な防除法が使えないからなのですね。より自然に近い状態のままアオサギを近づけさせないようにするわけですからこれは難題です。以前は、水深を50センチもとれば大丈夫と思っていたのですが、実際はどうやらこんなふうに飛び込むこともあるようで、浅瀬をなくしたからといって必ずしも安全ではありません。ではどうすればよいかということでいろいろ考えてみました。ひとつの案が右の絵で表したものです。やはりここでもアオサギが水に入れないように水際の水深は50センチ以上にします。ただ、それだけではアオサギが飛び込む可能性があるので、ここに魚がいてもアオサギが簡単に見つけられないように水草を茂らせます。この区間は水際から少なくとも2メートルはとったほうがほうが良いと思います。あまり短いと飛び越えて深いほうへダイブする恐れがありますから。ただ、これは相当な工事になりますし、池をつくる段階でやっておかないと、被害があってからつくり直すのは何かと大変そうです。

次は、アオサギを驚かして追い払う方法です。これはとにかくアオサギをびっくりさせれば良いのですからいろいろな方法が考えられます。単純に犬を放し飼いにして上手くいっているところもあります。音を出す装置とかでもいいわけです。そんな中で今回紹介するのはスプリンクラー。動物が一定範囲内に近づくと水が自動的にまき散らされる仕組みのもので、スケアクロウというでアメリカの製品です。パッケージにオオアオサギが描かれているところを見ると、あちらも日本と同じでサギ類の食害に手を焼いているということなのでしょうね。なお、実際にお求めになりたい方はAmazonで買えば半額くらいになるようです。こちらのビデオで実際に動作している様子が見られます。猫も犬もアライグマもシカも、そしてもちろんオオアオサギも皆びっくりして逃げていきます。ただの水ですから動物や鳥を傷つけることもありません。こんなものでも使いようによってはけっこう効果があると思います。アオサギの食害に困っている方、一度ご検討されてはいかがでしょうか。


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