アオサギを議論するページ

巣作り開始

江別コロニーのその後。16日は20羽弱だったアオサギが、17日はコロニーに38羽、ねぐらに6羽と一日で倍増しました。17日は適度な南風があったので風に乗ってやって来たのですね。これからも南風が吹くたびにどんどん渡ってきそうです。

コロニーでは、早いところはすでにペアができて巣作りも始まっています。この時期、雪に覆われた地上で巣材を見つけるのは大変です。ただ、今なら誰も使ってない巣が周りにたくさんありますから、使い古しの巣材でよければ簡単に調達できるのです。

ところで、アオサギの巣は雪の重みで落ちてしまうのもあれば、春までしっかり残るのもあります。どのくらいの巣が残るかは、その地域の気象条件や使われる巣材のタイプによって変わるはずでます。比較的、積雪量の多い江別コロニーの場合だと、すっかり無くなるのは全体の2、3割といったところ。残りは多かれ少なかれダメージを受けながらも何とか枝にしがみついています。

さて、春先、早くからコロニーにやってくるサギたちは早いもの順に営巣場所を選んでいきます。多くは残っている巣にまず陣取るようですね。ところが、使われていない空巣が周りにあっても、敢えて何も無いところに一からつくり始めるペアもいます。手間をかけても自分の好きなところに巣をつくりたいのでしょう。手っ取り早いからといってガタの来ている巣を適当にリフォームして、ヒナが生まれた頃にばらばら崩れたのでは後悔してもしきれませんからね。最初から自分でつくったほうが後々安心できるのかもしれません。あるいは、巣があろうが無かろうが、ともかくこの場所が好きなんだということかもしれません。ロケーションは大切です。何も考えずに適当なところにつくったら、あとあと隣近所との関係が面倒なことになりかねませんから。

シーズン到来

とうとう北海道にもアオサギが渡って来たようです。あちこちから初飛来の便りが届きはじめました。春めいてきたかなと思ったら、必ず来ますね。人間の私でも季節の移り目が分かるくらいですから、常時、自然の中で暮らす彼らなら、私たちよりはるかに正確に時を感じられるのでしょう。

写真は江別市にある冬ねぐらで羽を休めるアオサギたち。ついでにオオダイサギも1羽混じってます。氷のすっかり落ちた水辺といい、春の陽の反射の眩しいことといい、もう冬の光景ではないですね。

じつは、札幌近郊では少数が越冬しているため、この時期のアオサギは渡ってきたサギなのかここで冬を越したサギなのか判断しづらいのです。けれども、昨日この冬ねぐらにいたアオサギは20羽。越冬サギの数ではとても説明しきれません。明らかに渡りのサギたちが混じっています。その前日、札幌の平岡コロニーにも初飛来があったようですし、アオサギシーズン、いよいよ開幕です。

シーズン間近

日に日に日射しが明るくなってきました。北海道にアオサギが渡ってくるのももう秒読み段階です。

この冬は寒さが厳しかったせいか、札幌近郊のねぐらには10羽そこそこのアオサギしか残りませんでした。厳冬期にはさらに減り、1羽いたりいなかったり。一番多いときでもせいぜい3羽というところでした。今年の冬は、ねぐらにオジロワシが2羽も来ているので、そのことも少し影響したかもしれません。ねぐらでオジロがアオサギを襲うことはまずないでしょうけど、アオサギにしてみれば落ち着きませんからね。まあ、それでも時期が来れば彼らは戻ってきます。あともう少しです。

そんな北海道ですが、じつはすでに繁殖活動を始めているところもあります。帯広の街中にあるコロニーがそうで、毎年2月中旬には数つがいが巣をつくりはじめます。今年も、もう来ている頃かなと2月半ばに見てきたところ、アオサギの代わりにいたのはオオタカでした。そのうち2羽ばかりアオサギがコロニーに降り立ったものの、オオタカがいるのがどうも気に入らない様子。写真のように首をニュッと突き出してオオタカを確認すると、すぐに飛んでいってしまいました。体の大きさからすればアオサギのほうがいくぶん大きいのですけどね。大きさの問題ではないようです。

ただ、帯広のコロニーは特別で、北海道の場合、アオサギが繁殖を始めるのは普通は3月中旬以降になります。2月はまだ左の写真のような状況で、シーズンが始まりそうな気配は全くありません。更科源蔵の詩『蒼鷺』のような雰囲気です。『蝦夷榛に冬の陽があたる 凍原の上に青い影がのびる 蒼鷺は片脚をあげ 静かに目をとぢそして風をきく 風は葦を押して来て また何処かへ去って行く』 そんな感じですね。ゆっくり春を待つしかありません。焦ってコロニーに行ったところで、巣の上には雪がどっさり乗っかって巣作りどころではありませんから。

ところで、ここのねぐらには毎年のようにシラサギが1、2羽やって来ます。たぶんオオダイサギです。厳冬期には見かけませんが、冬も終わりに近づくこの時期にだけここに現れるのです。徐々に北に向かって移動しているということなのでしょうね。

冬を南の地域で過ごしたアオサギたちももう動き始めていることでしょう。この越冬地にも、付近に散らばっていた越冬サギたちがもう間もなく戻り始めます。越冬サギが集結し始めたら、何日も経たないうちに南からの第一陣が渡ってくるはずです。そうなれば、もう春ですね。

大規模コロニー列伝

先日の投稿で、北海道浦幌市と秋田県男鹿市、それに三重県尾鷲市が市の鳥をアオサギに指定していることを紹介しました。浦幌のコロニーについては稲穂コロニーのページに詳細を書いていますが、他のふたつのコロニーについても概要を書いておきたいと思います。

コロニーの位置(大きな地図で見る

まずは男鹿のコロニー。ここのアオサギは男鹿半島の山の中腹に営巣しています。私もずっと前に訪ねたことがありますが、ほんとうに山の中です。コロニーのある場所の標高は約400m。餌場になりそうな水辺といえば、山を下りて海に出るか、東へ14、5キロ飛んで八郎潟に出るしかないというような所です。飛翔力のある彼らにしてみれば、その程度は全く苦にならないのかもしれませんが、なにもわざわざこんな奥に引っ込まなくてもという感じです。

このコロニーについては1980年台の初めにかなり詳しく調査されていて、当時、推定で100つがい余りが営巣していたと報告されています(Ogasawara et al. 1982)。これが1955年まで遡るとずっと増えてだいたい250つがい。アオサギ単独コロニーとしては当時おそらく国内最大級だったはずです。

ここは営巣環境としては申し分ないところで、人里離れた場所である上に、巣がかけられているのは立派な秋田杉です。同報告書には、『このアオサギコロニーは面積2.48haにわたり、スギ約250本の天然林の地域である。この天然スギは胸高幹囲2.40-3.60m、高さ約30-40mの高木で、樹令約50-250年(平均150年)のものが多い』とあり、とても贅沢な居住環境であることが想像できます。

ただ、私がここを訪れた際、コロニーの傍らの木碑に「青サギ群生地」と書かれていたのには閉口させられました。植物でもないのに「群生」はあんまりです。このコロニーについては、上述の調査以降、これといった記録が無く、現在どのような状況なのかよく分かりません。近年、この地域では平地のもっと水辺に近いところにいくつかコロニーができているようですし、男鹿のコロニーが現在も昔のような規模で維持されているとはちょっと考えがたい気がします。

コロニーの位置(大きな地図で見る

次は尾鷲市のコロニーです。ここのアオサギが暮らしているのは尾鷲湾の入り口の佐波留島という無人島。アオサギとゴイサギの混合コロニーで、アオサギの繁殖個体数は1970年の調査で300〜350つがいと推定されています(倉田、樋口 1972)。記録上、国内でこれを凌ぐ大規模コロニーはごくわずかしかありません。少なくとも、1970年当時は国内最大のコロニーだった可能性は高いと思います。この報告はこちらのページで全文が読めますので興味のある方はどうぞ。なお、このコロニーも入手できる情報は上述のものだけで、その後の状況は分かりません。無人島ですし、餌場に大きな変化がなければ消滅はしていないと思いますが、どうなのでしょう。現地の状況が分かる方がいればお教えいただければ幸いです。

この他にもこれまであるいは現在、これらよりさらに大規模なコロニーはいくつも存在したと思われます。そして、その中で現存する国内最大規模のアオサギコロニーといえば、おそらく網走湖のコロニーをおいて他にないでしょう。網走湖コロニーはこちらのページに書いているように、2009年の時点で推定450〜500巣という巨大コロニーです。発見されてからでもすでに60数年。巣がかけられているのはハンノキ、ハルニレ、ヤチダモといった巨木で、おまけに林床は天然記念物の湿生植物群落で人が立ち入れないという、営巣環境としてはまず理想的な場所です。餌場も網走湖をはじめオホーツク湖沼群をほとんど独り占めしています。よほどのことが無い限りこの先も国内最大規模の地位は揺るがないでしょう。ただ残念なのは、それほどのコロニーでありながら認知度が極めて低いこと。地元の人にさえほとんど認知されてないという有り様なのです。これはいけません。コロニーのある大空町(旧女満別町)には、町の鳥をアオサギにするよう是非、検討してもらいたいものです。

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