アオサギを議論するページ

サギ類一斉調査ご協力のお願い

《注意》この記事はエイプリールフール用に書いたものでまったくの出鱈目です。お間違いなきよう。

すっかり春めいてきましたね。ここ北海道では南からのアオサギの群れが続々と到着し、日ごとにコロニーが賑やかになっているところです。

さて、すでにいろいろなところで話題になっているとおり、今年は全世界でサギ類の一斉調査が行われています。サギというと大きくて目に付きやすいため調査も十分になされていると思われがちですが、これが意外にほとんど調査されていないのですね。比較的丁寧に調査されているのはヨーロッパ、あとは北米ぐらいなもので、そのほかの地域は日本も含めもう全然ダメなのです。そんな状態ですから、今回のプロジェクトに寄せる期待は嫌が上にも高まります。

今回の調査はGoogleが進めているGoogle Maps of Wildlifeプロジェクトの一環で行われるもので、小型機を利用し上空からサギ類のコロニーを探索するのが目的です。ただ、困ったことに現段階で調査者がまだ全然足りてないのですね。日本での調査時期は5月、6月ということで、もうひと月しかありません。ところが、北海道地域だけでも調査スタッフが少なくともあと10人は必要という状況なのです。そこで今回のプロジェクトに携わっている者のひとりとして今回あらためてご協力をお願いしているような次第です。

本年度はコロニーの位置とおおよその規模の把握が目的で、種ごとの営巣数など詳細な情報収集は求められていません。そのため、調査者には特別な能力は必要なく、車が運転できるていどの普通の視力があって飛行機が苦手でなければどなたでも参加可能です。

なお、今回のプロジェクトはGoogleに加えてNational Geographicも協賛という形で参加しています。なので、ご想像のとおり調査資金はけっこう潤沢で、調査に参加される方には相当な謝礼が用意されているようです。まあ謝礼はおまけのようなものですが、航空機センサスなど個人ではなかなか企画できるものでありませんし、またとない貴重な体験になるのは間違いないと思います。そんなわけで、とりあえず以下に募集の詳細を貼っておきます。ご協力いただける方には私からもアオサギカレンダーを差し上げますので、お時間に都合のつく方は是非ご検討ください。どうかよろしくお願いいたします。

『Google Map of Wildlifeプロジェクト』調査者募集のお知らせ

その鷺、青き衣を纏いて…

アオサギは青くもないのになぜ青鷺なのかという疑問。おそらくこれは数あるアオサギの疑問の中でも筆頭に位置するのではないでしょうか。たしかに、色で名付けるなら灰鷺のほうが妥当なように思えます。実際、世界のほとんどの国では「灰色の鷺」と呼ばれているわけですから。ところが、この疑問の答えを見つけようとネット上を調べてみても、分かったような分からないような説明しか出てきません。曰く、古語では灰色のことを青と言っていた云々。もちろんそれも間違いではないのですが、これで納得できる人はかなり物分かりの良い人でしょう。

そこで、今回はこのことをもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。まずアオサギの青はどの漢字で書くのが正しいのかという問題。「青鷺」と「蒼鷺」、これはどちらも正解です。それに、いずれか片方が最近になって加わったとかではなく、両方とも大昔から日本で使われてきた漢字です。「青鷺」のほうは奈良時代初期に編纂された『常陸国風土記』に出てきますし、「蒼鷺」のほうはこれも奈良時代あるいはそれ以前に書かれた『漢語抄』に出てきます。「蒼鷺」のほうがなんとなく古そうですが、実際そのとおりで、「蒼鷺」の漢字は中国から伝わったものなのです。だから、今でも中国では「蒼鷺」の字が使われています。一方、あちらには「青鷺」という語はありません。アオサギといえば「蒼鷺」であって「青鷺」ではないのです。というのも、中国の青は日本の青と色合いがずいぶん異なるからなのですね。あちらの青は日本の青に比べるとずっと緑がかった明るい青色を指すようです。これではもうまったくアオサギの色合いとは言えません。かといって、日本の青がアオサギの色合いに合致するかといえばこちらもさっぱりですが…。そんなことで色の問題はともかく、「蒼鷺」の語が中国起源で、これが日本に伝わった後、蒼の代わりに青が当てられたというところまでは間違いなさそうです。

さて、青くもないサギになぜ青という色を冠したのかという冒頭の疑問。これはネットの知識的には、時を経るうちに青の意味が変わってしまったということで簡単に片付けられるわけですが、もう少し具体的に言うと、昔は現在の青色だけでなく、緑や灰色など寒色系の白黒はっきりしない色が総じて青とみなされていたということです。もっとも、昔の人の色の識別能力が現在の人より劣っていたということではありません。視覚的に見えているものは現代人も昔の人たちも同じです。要は、昔の人々には青や緑や灰色など個別の色をこと細かく区別する必要性がなかったということなのですね。結局、必要性こそが言葉をつくっているのです。

現代の日本では青と灰色を違う言葉で表せないと何かと不便ですが、では、朱色と橙色の違い、あるいはバーミリオンとスカーレットの違いはどうだと問われれば戸惑ってしまう人がほとんどではないでしょうか。それらの色が微妙に異なることは視覚的には分かっても、その色区分に実際的な意義を見い出せる人などほとんどいないと思います。それらの色を区別できなくても何不自由なく暮らしていけますから。同様に、もっと単純な色区分だけで用の足りる社会であれば、青と緑、青と灰色をわざわざ分ける必要などどこにもないのです。実際、ごく最近まで(あるいは今も?)青や灰色のない言語、社会はけっこうあったそうですよ。

そんなことで、色の種類は社会的必要性に迫られて少しずつ増えていくというのが普通のようです。なので、最初はどの社会どの言語でもわずかな色区分しかありません。そして面白いことに、色の表現の初期の段階では、あらゆる言語で例外のない規則があるということです。つまり、まず黒と白が区別され、その次に赤が来るという規則性ですね。この段階では青はまだ現れず、青の色合いは黒とみなされることが多いといいます。で、この黒白赤3つの色の次に、緑、黄、青という辺りが区分され、さらに後になって灰色などの曖昧な色が追加されていくようです。この辺のことは『言語が違えば世界も違って見えるわけ』という本に詳しく書かれているので興味のある方はぜひ読んでみてください。とても面白い本です。

この色の表現についてもう少し説明すると、黒、白、赤、青はどれも「い」で終わる形容詞形をもっています。緑や紫や灰色などはそうはいきません。つまり、黒、白、赤、青の4色はその他もろもろの色とは一線を画した別格の語彙と言えそうです。色の名そのものを表すということの他に、モノの様態や様相を表す言葉でもあったということなんですね(なお、黄色と茶色にも「い」が付けられますが、これらは黒、白、赤、青とは別の成り立ちをもつようです)。

それでは青が色以外に意味するものとはいったい何なのでしょう? これはおそらく無数の説があるのでしょうが、ここではありふれたものではない説を敢えて挙げてみたいと思います。まず、宗教(仏教)上の解釈として、青は死や怒りといった負のエネルギーを表しているという説があります。たとえば、青色の肌をしたインドのシバ神などがこれに当たります。また、青は魂や霊威の横溢した状態を示すとの解釈もあります。これはさらに青が呪力をもつという解釈にも繋がります。これらのイメージはベクトルの向きは多少違えど、いずれも強烈な精神性をもつという点ではかなり似通ったものと言えそうです。

一方、そうした青のイメージの受け入れ母体となるアオサギはというと、これこそ人によってそのイメージはさまざまなはず。けれども、アオサギの恐竜っぽさとか近寄りがたさとか、立ち姿の凜とした感じ、水面下に獲物を狙うときのはち切れそうな緊張感、そうした印象はそれほど個人差なく誰もが共通に感じとれるものではないでしょうか。そして、これらアオサギに本質的に備わっているイメージは、上に挙げた青の意味するものとかなりよく共鳴するような気がするのです。

アオサギがイメージを生成する主体だとすれば、青という語は基本的にアオサギに関係なく生成されたイメージの集合体といえます。このふたつがアオサギの色合いを拠り所に合体するとき、そこには名付け親が予想だにしなかった生成変化が起こるはずです。アオサギは青の語をさらに進化させ、青はアオサギをさらに魅力的な存在に変える…、これは青や赤白黒にしかできないマジックです。とても灰色や茶色の真似できる芸ではありません。アオサギが青鷺であり灰鷺でなかったことの意味はとてつもなく大きいのです。

謹賀新年

2016皆さん、明けましておめでとうございます。

今年の年賀状はアオサギをさまざまな言語で書いてみました。まあ、読めるのはほんの僅かしかありませんが…。ネットで翻訳してみるとほとんどは「灰色のサギ」という意味なんですね。日本語の「アオサギ」のように「青色のサギ」としているところはほとんどありません。日本のアオサギがハイサギでなくてほんとに良かったと思います。そんなわけで、本年ものんびりやっていきますので気軽におつきあいください。

さて、今回はお正月ということで昨年に引きつづきアオサギのクイズをつくってみました(昨年のはこちら)。生物学的な問題、文化史的な問題、いろいろ取り合わせてランダムに配置しています。ボタンのクリックで正答は分かりますが、念のためクイズの最後に答えを書いています。

問題は今回も25問。問題の性質上、分からないものは考えたところでたぶん分からないと思います。あまり悩まず、さらさらっと解いてみてください。では行ってみましょう!

Q1. ロシアの民話「アオサギとツル」におけるアオサギの性別は?

  • 不明

Q2. 現在、アオサギが属している分類上の目は?

  • ツル目
  • ペリカン目
  • カツオドリ目
  • コウノトリ目

Q3. 以下はアオサギの各国語名。では、このうち直訳が「青いサギ」になるのはどれ?

  • Серая цапля
  • Szürke gém
  • რუხი ყანჩა
  • Blauwe Reiger
  • Σταχτοτσικνιάς

Q4. アオサギの近縁種で北米に生息しているのは?

  • ズグロアオサギ
  • オニアオサギ
  • オオアオサギ
  • ムラサキサギ

Q5. アオサギのアイヌ名として間違っているのは?

  • ペッチャンコンナ
  • ペッチャエワク
  • ペッチャコアシ

Q6. アリストテレスによるアオサギについての記載で間違っているのはどれ?

  • 交尾が困難
  • 目から血を流す
  • 昼夜兼行で働く
  • 排泄物が液状

Q7. サギ科に分類されるサギは全部で66種。ではこのうちアオサギ属は何種?

  • 3種
  • 7種
  • 11種
  • 15種

Q8. 合唱曲として有名になった『蒼鷺』の作詞者は誰?

  • 山田耕筰
  • 野坂昭如
  • 更科源蔵
  • 野口雨情

Q9. アオサギの捕食が知られていない動物は?

  • ミンク
  • ハシブトガラス
  • アライグマ
  • ヒグマ
  • オジロワシ

Q10. アオサギの学名はArdea cinerea。Ardeaの意味はサギ。ではcinereaは?

  • 青色の
  • 群れている
  • 声の大きな
  • 灰色の

Q11. アオサギの生息していない国は?

  • フィンランド
  • マダガスカル
  • アイスランド
  • モルジブ

Q12. アオサギの卵の色は?

  • 淡い紅色
  • 白色
  • 灰色に茶色の斑点
  • 青緑色

Q13. 詩人ディラン・トマスがしばしばアオサギに投影したイメージとは?

  • 消防士
  • 政治家
  • 靴屋
  • 聖職者

Q14. ヨーロッパでアオサギがもっとも多く生息するとみられている国は?

  • オランダ
  • イギリス
  • フランス
  • スウェーデン

Q15. アオサギが姓の由来になっている作家は?

  • エドガー・アラン・ポー
  • ラフカディオ・ハーン
  • ホルヘ・ルイス・ボルヘス

Q16. 北海道でのアオサギの生息数にもっとも近いのは?

  • 500羽
  • 1,000羽
  • 10,000羽
  • 50,000羽

Q17. 以下の江戸時代の書物中、アオサギの発光現象について言及のあるものは?

  • 本草綱目
  • 梅村戴筆
  • 大和本草
  • 画図百鬼夜行

Q18. アオサギの食料として不適切なものは?

  • 木の実
  • 小鳥
  • ネズミ
  • ザリガニ

Q19. 「白百合のしろき畑のうへわたる青鷺づれのをかしき夕」。この歌を詠んだのは誰?

  • 北原白秋
  • 与謝野晶子
  • 正岡子規
  • 斎藤茂吉

Q20. アオサギの成鳥が一日に必要とする餌の量は?

  • 70g
  • 180g
  • 270g
  • 420g

Q21. 『鷺の灯』など、作品にアオサギやシラサギを多く登場させている作家は?

  • 泉鏡花
  • 芥川龍之介
  • 大江健三郎
  • 志賀直哉

Q22. アオサギの平時の飛行速度は?

  • 10km/h
  • 20km/h
  • 40km/h
  • 80km/h

Q23. かつて楼蘭で、結婚式の前夜に新郎が新婦に贈っていたものとは?

  • アオサギの冠羽
  • アオサギの羽ひと束
  • ひとつがいのアオサギ
  • アオサギのフンの香料

Q24. アオサギを町の鳥に指定していないのは?

  • 北海道浦幌市
  • 秋田県男鹿市
  • 滋賀県長浜市
  • 三重県尾鷲市

Q25. 古代エジプトの書物で、アオサギへの変身の呪文が載っているのは?

  • 『イプエルの訓戒』
  • 『生活に疲れた者の魂との対話』
  • 『死者の書』

はい、いかがだったでしょうか。期待値で計算すると、当てずっぽうで回答しても6、7問は正答になるはずです。それ以下だった人はがんばりましょう。15問以上正解だった人は、よほど鋭い勘の持ち主か、アオサギに何か異常な関心をもっている人かのいずれかでしょう。そんなわけで、本年もどうぞよろしくお願いします。

【こたえ】
A1. ② A2. ② A3. ④ A4. ③ A5. ① A6. ③ A7. ③ A8. ③ A9. ① A10. ④ A11. ③ A12. ④ A13. ④ A14. ① A15. ② A16. ③ A17. ③ A18. ① A19. ② A20. ③ A21. ① A22. ③ A23. ② A24. ③ A25. ③

サギ類カレンダー

cal今年も残すところあと数時間。ということで、来年のカレンダーをつくってみました。サギのイラストをあしらっただけの何の工夫もないカレンダーですが、一年中サギを眺めていたいというご奇特な方には役立つかもしれません。

A4の紙(多少厚めのほうが良いかも)とプリンターがあればつくれます。以下の画像をクリックするとPDFのページに飛びますので、そこからダウンロードしていただければと思います。ブラウザの設定によっては画像のクリックで直接ダウンロードが始まるかもしれません。内容はほぼ同じですが、写真のようにポストカードのフレームに合わせたものと横長のもの(全長・体重付き)を作っています。写真で三角に折っているのが横長のものです。まあ、どんなふうにでもお好きなようにアレンジしてみてください。

イラストのサギたちはアオサギ属に属する全11種です。残念なことに12ヶ月には1種足りません。仕方がないのでアオサギに2度登場してもらうことにしました。そこはアオサギ贔屓のサイトということでご容赦ください。なお、ここに挙げたサギたちの詳しいプロフィールはこちらのページで御覧になれます。

では、みなさん良いお年をお迎えください。

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